掌編怪談「空気」

富士山の空気が入っている缶詰めをお土産に貰った

前にも空気缶詰めを貰ったが、特に面白い事は起こらなかった

この手の商品には記念品以上の意味はないと言うのが持論だ

そんな事を思いつつも、折角なので缶を開ける

プシュッと空気の漏れる音がするがそれだけだ

缶をゴミ箱に捨て、ゲームを始めた

しばらくして肌寒さを感じたので冷房を切り、シャツを羽織る

だが寒さは強くなる一方だ

仕方ないので珈琲を淹れるが、ぬるい

沸騰したお湯で作っているのにおかしい

尚も寒いので体を動かそうとルームランナーに乗ったが、やはりおかしい

妙に息が上がる

普段10㎞は軽く走れるのに5㎞もキツい

そろそろ歳か…?煙草もやめるかな…

空気を入れ替えようと窓を開ける

夏らしい、粘り気のある空気が体を包んだ

何故か耳が詰まったので唾を飲み込んだ

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