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掌編怪談

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自作の掌編怪談のまとめ
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2023年4月の記事一覧

掌編怪談「インタビュー」

お名前は

藤代 洋平

ご年齢は

17

ご要望は

腹と胸を刺されて、最後は頸動脈を切られたい

最後に一言

この出会いに感謝します

それでは始めます

お願いします

会話を終えると目の前の少年へ近づき、その腹に包丁を突き刺した

呻き声を上げる

包丁を引き抜き、すぐさま右胸部へと突き刺す

腹から血が溢れ出る

痙攣している彼の胸から包丁を抜くと倒れそうになる

髪を掴んでそれを阻

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掌編怪談「鈴」

虫取りに来た山でミヤマクワガタを見つけた

捕まえようと慎重に近づくが、飛んで逃げた

追いかけて山に分け入る

だが追跡も虚しく見失ってしまった

挙げ句、ここがどこかも分からない

一時間ほど彷徨ったが、知った場所には出られなかった

このまま死ぬんだ

子供だったこともあり、そう考えると蹲って泣いていた

りん…りん…

微かに鈴の音が聞こえてくる

何かに誘われるかのように音の方へと足が動

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掌編怪談「ふしぎなポケット」

ポケットを叩くとビスケットが一つずつ増える

そんな童謡がある

小学生の頃は、それが当たり前だと思っていた

実際に食べ物を入れたポケットを叩くと、増えていたから仕方がない

学校の休み時間、友達がポケットに手を突っ込んでいたから叩いてみた

人間にやるとどうなるんだろうって気になって

そしたらその友達が、叩いた方の手を押さえながら蹲った

うぅ…と呻き声も聞こえる

ごめんと謝り、心配してい

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掌編怪談「ラジオ」

遊びつかれて公園のベンチで休んでいると何か聞こえてきた

ザ…ザザ

どうやらザッピング音のようだ

気になって辺りを見回すと、ベンチの背後にある木の枝に小さなラジオが掛けられていた

手に取って弄ってみる

◯◯動物園で本日パンダが産まれました

そんなニュースが聞こえてきたがすぐにザッピング音に戻り、しばらくして静かになった

何も聞こえないし壊れてんじゃん

友人の一人が言う

一瞬だけどニ

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掌編怪談「卵」

ある村に、神の卵とされる大岩が祀られていた

卵が孵化すると新たな神が誕生し、世界を平和に導くと伝えられている

神様とはいえまだ卵

供物を捧げる必要はない

その代わり、大岩を囲うように火を焚いている

火を絶やさぬよう、村人は交代で火守する

火を絶やすと、孵化出来ずに神様が死んでしまうとのこと

そんな日々を過ごしていたが、突然の大地震が村を襲った

その揺れで大岩が真っ二つに割れた

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掌編怪談「夢を聞く」

ときどき変わった夢を見る

それは音だけの夢

何も見えない暗闇の中、音だけが聞こえる

夢の中では自分と言う存在すらも認識できない

ただただ聞こえる音に想いを馳せる

そんな夢

夢を見始めた頃は風や雨、波などの自然音だけが聞こえていた

そのうちに鳥や虫など、生き物の鳴き声が聞こえ始め

しばらくして人の話し声や生活音が聞こえるようになり

そしていつからか、都会の喧騒と呼べるような雑音へと

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掌編怪談「日焼け」

夏と言うこともあり、一日中海で遊んだ

日焼け止めを塗っていたが、塗り直しをしなかった

そのせいで身体中真っ赤ですごく痛い

数日経つと顔も含め身体中の皮がむけた

驚くことに、顔が別人になっていた

骨格レベルで変わっているので、家族も友人も皆驚いていた

それから一週間かけて少しずつ元の顔に戻ったが、一体なんだったのだろうか

掌編怪談「土左衛門」

アーティスティックスイミングの大会も残すところあと数チームと言う頃

あるチームが競技を終え、プールサイドに上がる

すると会場がざわついた

プール中央に何か大きなものが沈んでいる

先ほど競技を終えたチームのメンバーはプールサイドに全員揃っている

沈んでいる何かに気がついたチームの人達は何やら困惑している様子

運営の関係者が回収に向かうが挙動がおかしい

しばらくして引き上げられたのは男の

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掌編怪談「鳴き声」

暑くなると、草むらからジーと言う鳴き声が聞こえてくる

子供の自分はどんな虫なのか気になり、草を掻き分けた

草むらにはバレーボールより一回り小さいサイズの白磁の壺が置かれていた

どつやら鳴き声は壺の中から聞こえてくるようだ

当時ハマっていたRPGの影響か、何も考えずに壺を地面に打ち付ける

割れた壺からは、ジーと書かれた紙が出てきた

壺を割ってから、ジーという鳴き声は聞こえなくなっていた

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掌編怪談「雨笠」

むかしむかし、笠が降る村があった

その笠を大切に使うと幸福になるとされていた

噂が近隣の村々へと伝わると村民が増え、村は豊かになった

しかし増えたのは欲にまみれた者ばかり

やはりと言うべきか、笠が降ると奪い合いとなった

人もたくさん亡くなり、その影響で村が維持できず

皆が不幸となった

それを知った大名の命により、僧が遣わされた

僧によって六尊の地蔵が祀られ、降った笠を地蔵に供えるよ

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掌編怪談「地図」

俺はニートだが、旅行が好きだ

なので地図サイトで旅行気分を味わうのが日課になっている

たまに航空写真が黒く塗り潰されていることがある

どうやら重要施設等は情報漏えいを防ぐため、黒塗りになっているらしい

そういうのは大抵調べれば出てくる

だが、調べてもヒットしない黒塗りの場所を見つけた

それは自分の住む県の隣にある

何があるのか気になり、古い地図を見ると畑があるようだ

黒塗りは最新の

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掌編怪談「顔出しパネル」

久しぶりの休暇

友だちと温泉街で足湯や食べ歩きを楽しんでいると、外れの方に異様に大きな顔出しパネルがあるのを見つけた

普段は見向きもしないが、テンションが上がっていたこともあり友だちがパネルから顔を出す

撮ってとせがむのでスマホを起動してカメラを向ける

スマホには建物しか写っていない

スマホから目を離し、周囲を確認するが友人どころかパネルも見当たらない

警察が出動する騒ぎになったが友人

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掌編怪談「童謡」

やることもなく、公園のベンチでただ空を見上げていた

ふと視線を横に向けると、電線に鳥がたくさん止まっている

思い付きで電線を五線譜に、鳥を音符に見立て鼻唄を口ずさむ

これが意外と悪くない

急いで帰宅して譜面に起こす

どんどんインスピレーションが湧き、ついに童謡が完成した

作曲に至った経緯から「ことり歌」と名付けたこの歌は、発表するとたちまち人気になった

それから十数年経ち、「ことり歌

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掌編怪談「揺れる車」

深夜のドライブで海に来た

駐車場に他の車はない

潮風が心地いいので、浜辺で横になる

しばらくそうしていたが、寒くなってきたので帰ろうと駐車場に戻る

すると車が一台増えており、大きく揺れている

ヤってるのかと思い、こっそりと近づいて中を覗く

手足を拘束された人が、車内で激しくもがいていた

目と口にもテープが貼られており、唸り声が漏れ聞こえる

すぐに通報し、駆けつけた警察に事情を説明す

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