におい 【創作短編小説】
何かを踏んだような気がした。それは誰かが吐いた檳榔だった。ここにいると私はお腹が空くことは無い。あらゆるにおいが混沌として私の目も鼻も満足しているだけでなく、わざわざ探さなくても食べる物に満ち溢れているために、空腹の境地に辿り着く前に大抵は何かを食べては飲んでいることが多いため、その感覚を忘れてしまうのである。食べることも飲むことも日常生活の一部であるが、ここにいるといつもその日の気分や赴いた場所によって、あまりにも選べる幅が多いために空腹の感覚を忘れながら、食べること、飲