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読書家を自称する人を私は信用していない

きっかけは、読書系YouTuberのvlogを観たことだった。

オタクを自称する彼女はバリバリと会社勤めをしながら小説家としても活動していて、彼女の動画に出合ったのはまったくの偶然だったし、その時点での彼女は特段有名人というわけでもなかったのだけれど、なぜだか私は彼女の暮らしぶりや働きぶり、言葉、考え方に魅了されてしまって、まだ多くない数の彼女の動画を一気見した。我ながら気持ち悪いはまりっぷりだ。

彼女の動画で特に好きだったのが、1時間近くある本棚紹介の動画だ。他人の本棚というのはどうしてこうも人を惹きつけるのだろうか。かくいう私も他人の本棚を覗きみるのがとても好きだ。『本棚』という本を持っているくらいに好きだ。この『本棚』(ヒヨコ舎)というのは文筆家やイラストレーター、漫画家などの本棚をのぞきみしてみようという趣旨の本で、当たり前だけれど本棚の見た目も本のラインナップもそれぞれに個性が出ているのがとても興味深い。ちなみに『本棚2』も持っている。どちらかというと『本棚』のほうが好きだった。なんて話はさておき、さすが小説家としても活動しているだけあって、彼女の本棚に並ぶ本はどれも魅力的で、説明は簡潔ながら視聴者に「読みたい!」と思わせる説得力に満ちた的確なものだった。実際に彼女の紹介を聞いて読んでみたものもあるし、読んだものはどれも本当に面白かった。

それで思ったんです。私は自分の本棚に並んでいる本のこと、きちんと説明できるのだろうか。

子どものころからずっと本を読んできて、所有した本も手放した本もたくさんあって、熾烈な争いを勝ち抜いてきた精鋭たちによっていまの私の本棚は成り立っているわけだけれど、本棚に並んでいる既読本すべての内容を覚えているかといったら怪しい、というかむしろ、きちんと覚えていて、内容を説明することができる本なんて数えるほどしかない。数えるほど、あるよね? 待て待て、あるよね? 説明できる本、多少はあるよね? まさか一冊もないなんてことないよね? 書いていて不安になってきたけれども、とにかく、本棚からさっと手に取った本の勘所を説明できる人に私はなりたい。そう強く思った。

本を読んだ私の感想は、たいがいが「面白かった」か「よくわからなかった」だ。まれなことだけれど「くっそつまんなかった」と思う本もあって、実はそういう本のほうがタイトルも内容もしっかり覚えていたりする。皮肉なものだ。上記したとおり、私の本棚に並んでいる既読本は数々の修羅場(?)を潜り抜けてきた猛者たちなわけで、面白いのは当たり前だし、好きなのはもちろんで、だから「この本面白いですよ」なんて生ぬるい紹介のしかたでは猛者に対して申し訳が立たない。何がどう面白いのか、どこがどう好きだったのか、伝えたい。

というわけで前置きが長くなりましたが、本棚にある本の紹介を始めてみることにしました。再読するきっかけもほしいしね。再読って、みなさんはどれくらいしていますか? 私はよほど好きなものでなければ再読することはありません。でも、2度読めば本の内容がよりぐっと体に入ってくることは仕事柄よくわかっている。逆にいえば、1回読んだだけでは本当の意味で読んだことにはなってないんです。文字を追って内容を「知った」だけにすぎない。わかってるんです、それはわかってる。でも積読の城に籠城しながら次々と世に出てくる新しい本に手を出している私には、一冊を何度も何度も繰り返し読む時間がない。ならば初回から「1日目なのに2日目のカレー」的こっくりとした読み方をすりゃよいのだけれど、もはや集中力もないし、記憶力もない。ないないないないいってるんだったら、もう本を読むのなんかやめちまえって感じだけど、読みたいんです。最近なんか、読みたい本の数と現実的に読める本の数との寒暖差で毎日めまいがしているくらいです。世の中には、まだ読んでいない、一度は読んでおきたい名作が多すぎる。どうかしてるよ。だったら忘れたっていいから再読なんかしないでどんどん読んでいけばいいじゃんて話なんですが、それもなんか違う気がして。これだけ多くのお金と時間を本に費やしてきたのに、結局何も残っていないなんて、それこそもったいないじゃないですか。どうせなら隅から隅まで楽しみ尽くしたい! それには再読&アウトプットだ! そんな安易な考えです。ここまで書いた時点でもうすでに続かなそうな気はしている。でも、いちかばちかやってみたいと思います。

さてどうなることやら。この記事で終わる可能性も大いにありなんだけれども。


本棚(ヒヨコ舎 2008)


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