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ある物流企業が行っている障害者雇用
障害者雇用 とは
そもそも障害者雇用とは、障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)により制定されたものです(詳しくは厚労省等の情報をご参照ください)。
簡単に言えば、障害者が社会における活躍の場づくりと差別しない・特性に配慮した措置をしなさい とでもいえばよいでしょうか。
一般事業主は従業員の2.5%以上雇用しなければなりません(2024年4月現在)。これは社会の責務であり、満たされないと納付金を収める必要があり、同状況が続くと公表・改善命令が出されることもあります。
表現としてはあまりよろしくありませんが、多くの企業はこの納付金を納めたくない・公表されないように…と様々な施策を行っているのではないでしょうか。
尾張陸運の障害者雇用
尾張陸運では様々な業務があります。
トラックの運転手・リフトでモノを運ぶ・ピッキング業務・引っ越し・仕訳業務・保育・便利屋…。
その中でも障害のある方々にメインで業務をして頂いているのは倉庫における業務です。
やって頂く業務は折り畳みコンテナ(通称:オリコン)の組立・折畳・種類分け、ピッキング・仕訳といくつかございます。
と、ここまでは他社様でも似たような業務はあると思います。
ちょっと違うのは「障害者だから」この業務をしてもらうという考えで仕事の切り出ししていないということです。
端的に言えば、一般就労されている方と全く同じ仕事を同じフロアで同じようにして頂いています。
例1
タブレットに指示された商品を指示された数だけオリコンに詰めていく業務。場所はロケーション管理されている為、バーコードを読み込めば商品の正誤・入れる数・場所をそれぞれ確認できるので安心して業務が行えます。
間違いがないことを第一に求められますが、一定以上のスピードも求められます。
例2
ピッキングされた商品が入ったオリコン(例1)をカートから降ろし、パレット(荷物を載せる板でリフトで上げ下げする為には欠かせない)に載せる業務。
ただ載せればいいのではなく、向きをちゃんと考えなければ次の業務に支障が出る・重さも考えてちゃんと積まないと荷崩れしてしまう…といったことを考えてもらいながら協力してやって頂いています。
状況によってはオリコンの組み立てやピッキング業務により空になった段ボール類を回収・処分する業務が加わることもあります。
例3
例2に近い業務ですが、形状が多種多様な箱類をカートに載せる。
これも向きや重さを考慮しつつ、尚且つこの業務では複数配送先の商品が流れてくるので、正しい配送先に仕分けをすることも必須となります。
担当レーンが決まっていて、任されたレーンは基本一人で業務を行うことになります。
例4
例3で仕訳られた荷物が載ったカートに対して配送先との紐づけ業務をハンドスキャナで行う。
カートにいくつ積載されているかといった業務や、そのカートが具体的にA配送先へ何カート行くのかと言ったことをデータ化することで、トラックに載せる内容やルートが決まり、配送先にも同一データが飛んでいく。正確性が求められる業務をお任せしています。
弊社では一人ひとりの得意な事をできるだけ活かし、苦手なことをできるだけ排除した配属をしていることと、チームの一員として協力して頂く…ピンチの時は一般就労している人の所にヘルプに行くといったこともよくあります。
初めから順風満帆にはいかない
尾張陸運は数年前まで法定雇用率に届かないままで、支援も何もありませんでした。ただ、一般就労者と同じ業務を同じレベルで求めていたので「たまたま適した業務」に就いていたり、就労に影響がない程度の身体障害をお持ちの方だったりする状況でした。
他のnoteを読んで頂ければ想像できるかもしれませんが、弊社ではだいたい本業外のことは総務に投げられ、だいたい私(筆者)に飛んできます。
障害者雇用も例外ではありませんでした。
宝の持ち腐れから宝の山になるまで
弊社にとって運転手としての障害者雇用はなかなか難しく、できない訳ではないが色々な制限があるのも現実です。担当になった際に目を付けたのが弊社のとある物流センター。働いている人からはこの現場で障害者雇用なんて無理だろう…と言われましたが、私からしたら宝の山でしかない状況でした。何なら準備は殆どできているじゃないかと言わざるを得ないぐらい。
言葉だけでは伝わらないので、同センター長を弊社と似たような業務をされていて組織的に障害者雇用ができている他社様への見学をしてもらったところ、彼らが一人の戦力として活躍している姿を目の当たりにして「下手な一般就労者より業務能力も高く余程優れた人材ばかりではないか」と、目から鱗の状態でした。
この反応を確信していたので、前準備として行政が主催する勉強会・イベントへの参加、障碍者職業生活相談員や企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)の受講など私自身の知識を増やし、見学後はすぐに就労移行支援事業所の見学や実習受け入れ、事業所や特別支援学校への見学等を積極的に行うようになりました。今後は部下にも見学の機会を設けたり、センター長自身も含めて資格取得を積極的に目指す予定だそうです。
実際の就業に対して、前述の通り得意を伸ばせる業務をしてもらえるように配慮するのは勿論、就業日数や時間も始めから週5日のフルタイムではなく、本人ができる範囲からスタートします。短い人は週10時間を切っている方もみえますが、様子を見ながら増やしたり、時には減らしたりして常に伴走できる形をとり、本人が持つ目標に向かって長く仕事ができる形になればと支援しています。
また、運のいいこと?に尾張陸運ではこれまでも多国籍の方が一定数就業されており、飛び交う言葉も様々であったことから写真やシステムだけで分かるような形をしていました。これがいわゆる「合理的配慮」であることを知らず知らずのうちに行っていたので、スムーズにできたと思っています(これが、殆ど準備ができているといった理由)。
若者のチカラ
また、一般社団法人草の根ささえあいプロジェクトの考えに共感し、生き辛い若者が社会復帰する支援活動に少しだけ協力しています。
ちょっとした躓きをきっかけに、足踏みをしている若者は沢山います。人材不足と言われる昨今、彼らのような「少しお休みをしているけど本当は頑張りたい」方々が活躍できる場を作ることが解決策にも繋がってきます。
見学や体験実習を弊社で行い、それをきっかけに「働きたい」という気持ちが生まれ、結果的に他社への就業が決まるケースもあります。大切にしていることは、弊社をきっかけ作りにしてもらうことと考えています。
偏見の目
障害者と一緒に仕事をするのを嫌がる従業員がいなかったかと言うと、一定数は存在していたのが事実です。
一部は彼らの働きぶりを見て考えを改めてくれましたが、色眼鏡を外せなかった人は自ら去っていくという選択をしていきました。
大多数の従業員は協力的であり、根気よく業務を教えてくれたり困っていたら声をかけてくれ、自然と障害のある方にとって働きやすい環境=自分達にとっても働きやすい環境を考えてくれました。
これからの目標
数年で法定雇用率を十分達成することができたのですが、センター長も私も目を向けているところは目先の雇用率ではなく、弊社で活躍して欲しいという思いのもと、日々彼らと向き合っています。
ありがたいことに、現在(2024年5月現在)弊社の規模にしては多くの方に活躍して頂いており、お願いしたい業務内容のキャパシティーが限界に近づいていますので、そろそろ次のステップ(新たな業務の創設)に進むべきかと検討しています。
最後に
障害者雇用をしたことのない企業様・企業としては取り組んでいるが担当に抜擢された未経験の方はまだまだ多いかと存じます。
地域には様々な障害者雇用を応援・支援する行政機関や事業所が存在しています。自分達では「自社に障害者にあった仕事なんてない」と思っていても、思わぬことが「この業務はお任せできる」というものが多々存在しています。
そういった業務を切り出してもらったり、実際にどういった形で導入すればいいかといった提案や、実際に働きたい方の紹介等もしてもらえます。
また、障害者雇用でうまく運営されている企業様も多くあります。
沢山見学して「自社でこういったことはできないか?」と考えるきっかけになりますし、成功例をまとめたサイトもありますので参考にしては如何でしょうか。
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