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「ELDENRING」における「火の巨人」の美しさ①

この文章は、「エルデンリング」のボスのネタバレを含んでおり、かつ、初めてボスと対面して模索する楽しみを損なうような内容である。留意して読んでいただきたい。
適宜、画像を追加する予定。

「ELDEN RING」の発売よりはや数カ月が経過し、様々な面からの成熟したゲーム評価がなされてきていることと思う。

ここでは、アクションゲームとしての「エルデンリング」を、そのストーリー中のボスである「火の巨人」との戦闘から評価したい。

「火の巨人」

戦闘の開始


山嶺の麓から、「DARK SOULS2」のような朽ちた巨人たちを一瞥しながら巨大な鎖を渡り、巨大な釜を仰ぎ見ると、巨人もまたその釜を頂いている。おそらくは遠目から見ても異様なまでの巨大さに、映画的興奮を覚えたのは私ばかりではないだろう。


「巨人」ボスの欠点と、その克服

火の巨人が(ほぼ確実に)放つ衝撃波をかいくぐって彼に近づくにつれて、「DARK SOULS」シリーズで感じたような不安がよぎる。
「足しか見えない」という不自由さである。
「DARK SOULS」の「アイアンゴーレム」、「DARK SOULS 2」の「最後の巨人」などとの戦闘では、巨人という迫力を出しやすいモチーフにもかかわらず、その巨大さゆえに全身が視点としてのカメラに収まりきらない。結果として戦闘が地味で緊迫感を感じにくいというある種克服しがたい欠点があった。
「DARK SOULS 3」からは、カメラアングルをやや俯瞰視点とすることでこれを改善し、「巨人ヨーム」との戦闘は緊迫感のあるものとなっていた。

さて、「エルデンリング」ではどうだろうか。実のところ、足しか見えないという点は否めない。これは「火の巨人」が巨大すぎるためであるが、ボスとしての行動パターンやデザインによって上記の欠点を克服することに成功している。以下に、いくつかを列挙する。

①「左足が弱点」というデザイン
②足だけ見てすべての行動パターンを見分けられる設計
③ローリングという退避行動
④見上げることをうながすモーション

それぞれについて説明しよう。

①「左足が弱点」というデザイン

火の巨人の左足にはミサンガが巻かれており、そこを攻撃することで常よりも大きなダメージが入り、また一時的にひるませることが可能だ。これは、「足しか見えない」というボスとしての欠点を逆に利用し、必ず弱点が目に入ってくるという工夫である。すなわち、近づけば自ずと足が拡大されて来、巨大なボスの弱点が露呈されるという構造なのであり、これは「DARK SOULS」の「アイアンゴーレム」にも通じる。「火の巨人」はこれよりも迫力が増しているのだが、その理由は後述する。

ともあれ、全身がカメラに収まらないという不自由さを、弱点としての足への視点誘導として用いることが、アクションとしての快適さに一役買っていると感じる次第である。

②足だけみてすべての行動パターンを見分けられる設計

あまり重要ではない項目で、ノーダメージや協力プレイでの立ち回りを極めるような者向けの情報となってしまうが、足のみをカメラに収めていても火の巨人の歩数と叫び声だけに注視することで、行動パターンを見切ることができる。一例としては、
叫びながら三歩    ➡右手で叩きつけ
叫びながら二歩後ずさり➡なぎ払い
飛び上がる      ➡ジャンプ攻撃
長く咆吼し左足をあげる➡両手で叩きつけ

などである。足しか見えない状態は、モーションが見にくいという点でもよしとされないが、「火の巨人」においては、多彩な行動パターンを見分ける必要があり、かつ足に注視しているだけでもそれを行えることから、単調さが生まれにくく、激しく動き回るアクション性を達成している。

③ローリングという退避行動

「火の巨人」での印象的な行動といえば、ローリングである。判定が複数回発生し、威力もかなり高いこと、さらに距離が離れてしまうことから、評価が分かれるところであろうが、私はこれを好意的に評価している。

じつは、弱点の左足を攻撃し続けてひるませたのちの行動は固定化されている。
ひるみから復帰すると、前方にローリングし、動作終了時に一定の距離以内にプレイヤーキャラクターがいないことを確認、火をまとうモーションを行う。この後に「悪神の火」または「火よ、焼きつくせ!」を行うまでが確定の行動である。
余談として、ローリング後に一定の距離以内にプレイヤーキャラクターがいた場合は距離が離れるまでローリングし続ける。

さて、ローリングで距離を離すことでどのような臨場感が生まれるのだろうか。
まずはもちろん、「火の巨人」の全身がカメラに収まることであろう。弱点だけがクローズアップされていたのでは、いかに迫力を出しているとはいえ実在性が損なわれる。「火の巨人」はあくまでも巨人としての背景、物語性を持っているのであり、足しか見えていない存在に、「巨人」としての印象は持てない。そこで、巨人としての性質を活かしつつ、景観としての巨人を印象づけるという点においても、ローリング攻撃は有効に働いている。ローリングでは巨人が体を丸めて転がる都合上、接近していようとも全身が映るからである。ローリングから遠く離れた巨人を望むとき、戦闘開始以来改めて巨人の巨人たるさまを目に焼き付けることになる。

さらに、ローリングは褪せ人、すなわち我々のキャラクターも頻繁に行う点も面白い。人型ボスとしての利点であろうか。「鈍重さもありながら軽快に転がって回避する」のは、いわばプレイヤーキャラクターもおなじなのであって、やはり文字通り「巨人」なのだと再認識することになろう。このローリング行動は、いままでの「巨人」ボスを過去のものとするほどの画期的なものであると評価している。「アイアンゴーレム」と大きく一線を画するのもこの点だ。

④見上げることをうながすモーション 

「火の巨人」には、かがみこむようなモーションの攻撃が多い。三歩歩いてからの叩きつけなどで顕著だが、上から下に振り下ろす動作が非常に多様になされている。畢竟我々は攻撃を避けようとすればカメラを思わず上に向けてしまっている。すると、いままで断片的であった巨大さが、たちまち実感できるようになる。なにしろ、火の巨人の目は常にこちらを見ているのだ。私などは、振り上げられた足につられてカメラをあげた際、はっきりと「巨人と目が合った」と感じたものである。足に弱点があり、足ばかり映る関係上、足下への攻撃をいかに見せるかが肝要となるが、「火の巨人」の持つ巨大な盆が、下を攻撃しながら上に注目させる役目を担っていると見ることも出来よう。つまり、盆でなぎ払うだけであってもその盆を持つ手を見据える必要があるのであり、結果としてカメラが見上げることで巨人の全身を捉える。その刹那、巨人の迫力と山嶺の雪景色、そして美しい空が目に入り、思わず吐息も漏れようというものだ。

総じて、「火の巨人」は過去の作品の同類のボスデザインを踏まえつつ、新しい要素を多分に含んだ、アクションゲームとして非常に練られたボスであるといえよう。
だが、私は未だ本題にすら入れていない。「火の巨人」の美しいデザインの真骨頂は、第二形態にあると考えるからだ。それをさらに語るには長すぎるため、こちらを一度区切りとしたい。


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