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「文は人なり」

文は人なり
文は人なり、という。有名なこの言葉を、犬は文章を書かないという意味で了解している人が多い。そうではない。文章とは、人そのものなのだ。その人の、性格も、感情も、知能も、来歴も性癖も趣味も、おっちょこちょいもしみったれもあんにゃもんにゃも、一切合切が出るものなのだ。いや、出てしまわなければならないものなのだ。

「三行で撃つ〈善く、生きる〉ための文章塾」
近藤康太郎

犬は文章を書かない、のではなくて、
文章は人そのもの。

本を読んでるときは気づかなかったけど、
文を書くようになってなんとなくわかる。

ただ、滲み出ているけれど、
出てしまわないといけない次元までは遠い。

とはいえ、その「出してない」と自覚している
ことの中にこそ人があると思う。
もしくは自覚さえしてないことの中に。

noteで
書いてない性格→暴君で傲慢。気性の激しさ。
書いてない感情→憎しみ、苛立ち、悲しみ。
おっちょこちょい→チャックがあきがち。

と書いてみて気づくことは、不だ。

正であり、清であり、静でありは、
書いているし書きやすいが、
自分や社会の「不」を置き去りにしているので
「文が人」でないし
「人が文」に至っていない。

とも思ったが、それもまた
違う。いやそれだけでは不足してそうだ。

良く、生きる。善く、生きる。好く、生きる。
生活者であること。表現などより、まずもって、その日を良く生きろ。存分に生きろ。汗で書け。
善意の人であること。自らを律する道徳をもて。他者に親切であれ。いじけるな。
自分を憐れむな。表現とは、他者を憐れむためにある。
好人物であること。信じやすいお人好しであれ。騙すな。騙されていろ。しかし、目をくらますことはできない。

同上

すべて正だ。正義だ。
不をひけらかす必要は、なさそうだ。

生活でしか書けない。
毎日、文字通り必死だ。
冷や汗ばかりだ。
悪意はない。
自分を憐れみがちなのは、他者を憐れむからだ
お人よしがすぎる。

ただ、人を騙さないが、自分を騙している。

ここだ!

自分を騙さないことが、文が人になるのかも。

その正義は伝わるのか
書くことの原動力が「怒り」であることは、ある。義憤にかられて文章を書くのが、むしろジャーナリストの主戦場だ。しかし同時に覚えておかなければならない。その義憤にかられた文章を、だれに読ませたいのか、ということだ。

同上

怒りは不だ。

不平不満不安を、「義」に従って書き出すのは
文であっても、人ではない。

正義は、伝わらないことが、悲しいかな多い。

それは怒りが起点であり、終点だから。

起点は自分でも、終点は人。

政権をなんとなく支持している人、判断がつきかねている人、もしくは、確固として政権を支持している人に、その言葉は向けられているのではないのか。
メディアとは、触媒のことだ。波だ。どんなに弱い波動であっても、対岸に伝わる波でなければならない。伝導しなければ、文章は文章として、意味をなしていない。

同上

共感の時代と言われて久しい。
共感するのは、近しい経験、近しい価値観、
近しい課題感を持つ人たちであって、
それもまた尊いことだけれど。

共感し得ない人、関心のない人に、
いかに届けるか?届くか。

それは、不ではないんだろうな。
対岸に届くのは、可だ。

不可能を可能にしていく夢があるか。
託したくなる、または共に行きたくなる
景色があるか。


屈託がなくおおらかで、おっとりと、他を攻撃しない。つまり君子でなければならない。
ライターは、君子たるべきだ。正気で言っている。
おもしろいことを書く人がライターなのだと書いた。もう少し正確に言うと、表現者とは、おもしろいことを、発見する人のことだ。

同上

おもしろいことを、可能にしていく人。
おもしろくないことを、発見して、
おもしろいことに、点火していく人。
それがライター。lighter。


ところで、なぜおもしろいことを見つけなければならないのか。それは、世界がおもしろくないからだ。
世界は愚劣で、人生は生きるに値しない。そんなことは、じつはあたりまえなのだ。世界は、あなたを中心に回っているのではない。宇宙は、あなたのために生まれたのではない。

同上

起点がもう、おもしろい。
世の中は、おもしろくない。
生きるに値しない、ことがあたりまえ。
びっくり!

だけど、共感した。

生きるに値するおもしろみは有難いことなんだ

不安でも不満でもなく、ファン。

「おもしろきこともなき世をおもしろく」などという歌があるが、そもそも「おもしろきこともなき世」が、常態なのだ。
だから、人類は発見する必要があった。歌や、踊りや、ものがたりが、表現が、この世に絶えたことは、人類創世以来、一度もない。それは人間が、表現を必要とする生物だから。

同上

表現様様。

おもしろい世に、おもしろいことも、
凝らした表現も、生まれない。

生まれたのはおもしろくない世で、
おもしろきを可にしていく人たち、
ライターが、夢を見せてくれる。

そんな一人に、いつかなりたい。

文が人になりたい。

今日もお付き合いくださりありがとう
ございます。

いつもの通勤路は鳥を見ていたし
太陽をみていたけど、そこには橋があった。

対岸をつなぐ橋。
とまり木になる橋。

そんな橋になりたい。

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