体験談A④
件の海辺のレストランに到着して早速二人でテラス席に案内してもらった。
ランチメニューを適当に頼み、海を眺める。
「どの辺に見えたの?」
私は聞いた。
「あの辺です。」
彼女は岸から20メートルほどはなれ離れたところにある岩の隣あたりを指さした。
私には何も見えなかった。
「明日は彼氏仕事休み?」
「明日も仕事なんです。」
「じゃあ今日も泊っていいね?」
「もちろんです。
というか昨日の今日で怖いんでぜひ泊ってください。」
その後は料理に舌鼓を打ちながら談笑していた。
視界の端に何か見えたような気がした。
一度自宅に寄ってもらい着替えを調達し、そのまま彼女の自宅へ。
いやぁ昨日はラッキーだったなー
コンビニの帰りに彼女のシャワータイムに遭遇するなんてなー
ばれちゃいけないから少し匂い嗅いで直ぐに部屋に隠れちゃったけど最高だった。
結局昨日はあんまり盛り上がらなかったからお酒も余っちゃったけど…
何かあったのかな?
僕が守ってあげなくちゃ。
あれ?昨日の女の子今日も来てるみたいだ。
彼女の家に着くとまた隣の人がごみを捨てている。
あの後ろ姿なーんか見たことある気がするんだよな。
いや、まさか
私は例の男の後ろ姿をはっきりとは見ていない。
彼女の部屋の中でレストランでの事を話した。
「あのさぁ
あたしも見ちゃったかもしれない」
確かにあの時視界の端に何か映ったのだ。
レストランで騒ぐわけにはいかなかったのと、直ぐに何も見えなくなってしまったので話さなかったのだが
帰ってきて落ち着いてからなんとなく後ろ寒い感じが拭えないのと、彼女の様子が少しおかしかったので話してみることにした。
「あの、」
彼女が突然話し始めた。
「多分、今います。」
どうやら彼女はそれを感じているらしい。
彼女がカーテンを開いた。
まだ昼だというのに窓の外20メートルほど先、目の悪い私でもなぜかくっきりと見える。
男だ、隣の。
「ねえ、あれ隣の人だよね?」
「昨日私も隣の人の後ろ姿みてちょっと似てるかもって。
でも後ろ姿だけだから自信が…」
私には男の正面が見えていた
「いや、あれ隣の人で間違いないよ」
そう、間違いなく昨日から何度か見た隣の男の人の困り顔なのだ。
私はカーテンを急いで閉めた。
「でも隣の人生きてますよね」
「そうなんだよねぇ」
私たちは困ってしまった。
「助けてください。」
俺はお化けの類は全く信じていないんだが、最近どうしても現実的に説明できない事に悩まされている。
もう2年ほど付き合っている彼女と一緒にいる時に男が見てくるんだ。
彼女が可愛いから多少はしょうがないと思っているがどこにいても同じくらいの距離で同じ男が見てくる。
最初はストーカーか何かかと思ったが、明らかに人間が立てないところに立ってることがある。
しかも彼女にも見えているらしい。
ただ、彼女と同じところで同じ人を見ているのに彼女には後ろ姿が見えているという。
気持ち悪いし彼女は後ろ姿だけで怖がっているからあまり話さないようにしているが正面きって見られるのも正直もうたまらない。
それで近所のお寺の住職に助けてもらおうって算段なのだが。
どうも煮え切らない。
「うーーん
話を聞く限りそりゃ生霊ですな、ただ悪意を感じない。」
「おそらく彼女さんについている生霊でしょうが、もう守護霊みたいになってますな」
適当な事を言いやがってと思った。
「何とかならないんですか?」
「その生霊と直接話してみんことにはねぇ
それかガラッと環境を変えてみるとかしたらいいと思いますよ」
その手があったか
ちょうどそろそろ同棲でもしようかと話していたところだった。
「わかりました、ありがとうございました。」
礼を言いそそくさと家に帰って彼女に連絡する。
「今晩時間取れるかな?」
「良いけどどうしたの?」
「今夜話すよ。」
そんな連絡をかわし同棲ついでに引っ越そうという話をするため、物件を検索しつつ夜を待った。
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