見出し画像

歩行と立位に共通する要素とは?

歩行を改善するためには、歩行の繰り返しが必要でしょうか?

もちろん歩行訓練は重要な練習です。しかし異常歩行を呈する患者さんに対して、ただただ歩行訓練を繰り返すことで正常歩行に近づいていくでしょうか?

徐々に良い方向に変化をしていく人もいます。
でも、その患者さん特有な歩行パターンが定着していってしまう場合もあります。

私たちが関わる中で悩むのは、後者の歩行の繰り返しだけでなかなか良い方向に変化をしない、代償が出現したり、恐怖感から歩行訓練そのものが積極的に行えない患者さんと出会った場合ではないでしょうか。


私は、歩行が上手くいかず客観的なふらつきや異常パターンが観察できたり、また患者さん自身が転倒不安感や下肢の支持感のなさを感じている場合、まずは立位の評価と介入を進めていきます。


理由はシンプルで、歩行よりも立位の方が難易度が低いと考えているからです。

では歩行につなげるための立位を考えていきましょう。


立位と歩行の課題難易度

画像1

立位保持と歩行の難易度を比較してみましょう。

立位では体重を支えるのは、二本の脚。
歩行では両脚支持期もありますが、MSt・TStでは片脚で体重を支える時期があります。

立位では両足底で作られる支持基底面の中で重心を保持しますが、
歩行では左右の足底に次々と重心を移動していきます。

立位保持であれば(場面にもよりますが)、筋活動は持続的な抗重力筋の活動がメイン。
それに比べると歩行では様々な筋がタイミング良く切り替わりながら歩行を実現しています。

*基本的な歩行の知識や歩行分析について学びたい方はこちらから↓

歩行と立位:歩行につなげるための座位・立位の評価と介入.003

(画像をクリックするとリンク先へ移動します)


歩行に必要な要素は?

歩行と立位に共通する要素:歩行につなげるための座位・立位の評価と介入.004

では立位と歩行に共通する要素を考えるために、歩行にとって必要な要素を考えていきましょう。

歩行時において、下肢に必要な要素は大きく2つ、
「支える(支持性)」+「進む(推進・重心移動)」
です。

脳卒中や下肢の運動器疾患などで下肢の機能低下があった場合、支持と推進機能の低下から歩行に悪影響を及ぼすことになります。


支持と推進のどちらが大事か?と言われれば、
即答で「支持」と答えます!

そしてこの「支持」能力は、立位保持にも共通した要素の1つですね。

じゃあ推進(重心移動)は?というとこれも立位では左右に重心移動する場面では必要な要素です。


ただ、推進能力はまず支持能力が前提になります。そして歩行の場合でも私は立脚期からの評価・介入を優先します。

歩行と立位の共通要素:歩行につなげるための座位・立位の評価と介入.005

転んだら元も子もありませんので。
まずは体重がかかっても、転ばない支持は必要ですよね。
手すりや杖などの歩行補助具を使用することで支持能力の不足を補うことはできます。

臨床場面では、下肢機能が低下した患者さんでは、自立レベルの方でも、(転ばないように)支持はできても、患側下肢での推進が困難な方が多い印象です。
患側下肢の立脚期での骨盤の前方移動が不足していたり、体幹の前傾にて前方の重心移動を代償していることも目にします。


良い荷重の支持とは?

では下の図を見て良い立ち方はどれかを考えてみてください!

歩行と立位の共通要素:歩行につなげるための座位・立位の評価と介入.013







まぁ、「B」って言いたくなりますよね。


ではなぜ「B」が良くて、「A」「C」はダメなんでしょうか?


ここで一度、荷重、支持という用語について考えてみましょう。

歩行と立位の共通要素:歩行につなげるための座位・立位の評価と介入.014

上図のように、
荷重:構造物の全体または部分に加わる力
支持:ある状態が崩れないように維持する

ことです。

「立位における下肢の支持性」は、
下肢にかかる上半身の重さ(荷重)に対して、転ばないよう保持できる能力

ということになりますね。

そう考えると、

ここから先は

2,693字 / 12画像 / 1ファイル
この記事のみ ¥ 1,000

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?