見出し画像

日本国憲法に違反し、国際条約に反した豚肉差額関税制度 その1

前書き


官僚を揶揄するときに良く言われる言葉で、「省益あつて国益なし」というのがありますが、これから述べるのは「省益も国益もない、国民を害し冤罪を生んできた国際条約違反の貿易障壁」の話です。この国際条約違反の貿易障壁とは、具体的には1995年に発効したWTO農業協定に違反している豚肉の差額関税制度の事です。

日本国憲法は以下の条文で明確に条約の遵守を定めています。
第98条 【最高法規、条約及び国際法規の遵守】
 第1項 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、 詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
 第2項 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

ところが、日本国の立法、行政、司法も知ってか知らずか、条約違反すなわち憲法違反の法律(貿易制度)を制定し(立法)、運用し(行政)、憲法判断回避(司法)という状態を続けてきました。また、通常の貿易障壁というものは、国内の特定産業を保護するために設けられるのですが、この差額関税制度は制度そのものが酷いために国益を害しているのです。これから解説する差額関税制度は30年もの間、国の内外から批判を浴びながらも冤罪事件を増やしつつ現在に至っています。 

話は変わりますが、2020年3月に始まった警視庁公安部の事件捏造と、検察と裁判所による人質司法によって理不尽にも大川原化工機の経営者3名(大川原さん、島田さん、相嶋さん)が1年近く、公判も開かれず未決のまま長期拘留され、相嶋さんが拘置所内で満足な治療も受けられずに、2020年11月にやっと所外の病院に入院した時には、胃がんは既に手遅れで、2021年2月にお亡くなってしまったという痛ましい事件がありました。

中国やロシアの話ではありません。民主主義国家である日本の大川原化工機冤罪事件です。結局のところ、相嶋さんの8度の保釈請求を裁判所は却下し続けたのでしたが、裁判そのものは2021年7月検察官の公訴取消し申し立てによって裁判所が公訴棄却の決定を出して裁判はあっけなく終結したのです。公訴取り消しの理由を検察は全く発表しませんでした。

その後の国家賠償請求訴訟によって数々の問題点がうきぼりになったのは、マスコミで大々的に報じられたので、ご存じのかたも多いと思います。 筆者も特に酷いと思ったのは、証拠を捏造し不当な取り調べを行った警視庁公安部の警察官、客観的な規制要件に該当しないことを当然知り得るべきであったにもかかわらず、漫然と見落として起訴を強行した検察官、そして公判前整理手続の進行中も大川原さん、島田さん、相嶋さんの勾留を続け、弁護側の保釈請求を漫然と長期にわたり却下し続けた裁判官。

とくに、東京拘置所内の医師による診察、検査を受け、胃に悪性腫瘍があると診断されたAさんの保釈請求をも無情にも却下しつづけたために十分な治療を受ける機会を奪いAさんを死に追いやってしまったことについてお悔やみの言葉一つすら述べない冷酷な人間達に対して、このような不正義があってよいのだろうかと思うのです。

さて、大川原化工機さんが被った厄災の話はこのくらいにして、食肉業界が長い間被ってきた豚肉輸入についての厄災について話を進めましょう。豚肉と言えば、日本で最も多く消費されている食肉ですが、その輸入には牛肉や鶏肉などの食肉を輸入している大手商社であっても怖くて手を出せないという期間が半世紀も続いていました。過去には名だたる財閥系の大手商社も日本で一・二を争う大手ハム会社も関税法違反として摘発され、中には数十億から100億円を超える巨額の脱税額とされた豚肉輸入企業もあります。

これらの脱税の処分には、刑事訴追を受ける犯則調査によるものと、訴追を受けない事後調査による更正処分の2つがありますが、百億を超える脱税でも刑事訴追を受けずにうやむやのまま報道もされずに終わってしまうケース(財務省プレス発表2013年11月)もあれば、数億円を脱税したとして刑事訴追された上場企業のケースもありました。
 
“刑事訴追されるか、それともされないか”という事については、所得税の場合には、個人でも法人でも脱税金額が数千万円~1億でも刑事訴追されたかと思いますが、関税であれば、刑事罰を受けるかどうかの分かれ道は良く分からずあやふやです。それは、企業の大小で決まるものでもなく、脱税金額を納付したかしなかったかでもなく、税関職員の感情次第としか言いようがないのです。

ところで、脱税とひとくくりに言いますが、実際には通常の所得税などの脱税と差額関税で脱税と呼ばれるものとは大きく異なっている点があります。単純に言いますと通常の脱税では売上げを計上しなかったり、経費を水増ししたりして、所得を過少申告するのが脱税です。

しかしながら、豚肉の輸入については、脱税とされた事案の根本は豚肉の異常な輸入制度の歪みから生じたものなのです。豚肉の差額関税制度は、国(行政)が設定した国家統制価格(分岐点価格)だけでのみ輸入申告せざるを得ない様な仕組みとなっています。ところが、この国家統制価格で輸入し、わずかな商社口銭(3%程度)でユーザーに販売した商社を脱税企業として告発するという、自由貿易を阻害する事案が過去に多々発生していたのです。

その根本的な原因として豚肉の差額関税を規定している法律である関税暫定措置法が条約違反だという事が、近年になって議論されています。実際に条約違反であれば、どのような事になるでしょうか。結論から言いますと、本来条約違反の法律は、日本国にあってはならない著しく不当な法律なのです。それは先述の日本国憲法98条の条文に明白に定められているのです。

続きは有料ですが、X(旧ツイッター)でリポストしていただければ無料になります。Xには以下のサイトからお入りください。
(20) ブリッジインターナショナル (@biitokyo) / X (twitter.com)

ここから先は

3,043字

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?