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岐阜県 小森橋の下部工ブラケット 平面 vs 曲面

 橋脚の小判型(分野によってはレーストラック型と呼ぶものの、建設分野では聞かないかな)のものがあり、耐震補強設計となると、「どうやってアンカーボルトを突っ込めばいいんじゃ!」と叫ぶとか、叫ばないとか。
 意匠としても小判型の橋脚はきれいだと思いますが、落橋防止システムの設計となればどのようにデバイスを取り付けるのか?どのように衝突させるのか?は悩むところです。
 小森橋は中央道をまたぐ橋で、中津川市にあります。神坂PAに隣接した跨道橋です。

小森橋

 橋軸方向と橋軸直角方向で取り付けられているブラケットが違います。
 橋軸方向は日本道路公団の時代でしたか?標準的な構造として取り付けられていたものです。東名高速の中空床版橋などで見かけるタイプです。当時の状況はわかりませんが、たぶんカタログ品的に作られていのかな?と思います。現行基準には合わないのかもしれませんが、寸法的にもちょうどよい・・・(以下省略)

橋軸方向:PC?RC?のコンクリート製ストッパー

 興味深いのは橋軸直角方向の鋼製ストッパーです。
 今回のタイトルの通り、小判型の円弧部に取り付けるということで、面と面の接触にできず、取付のご苦労がうかがえます。

橋軸直角方向の鋼製ストッパー

 近づいてみると、「なるほど」が半分、「どうなっているの?」が半分です。円弧状に合わせるためにベースプレートからさらに鋼材部分があるので、形状としては納得です。でも、鋼材の内側はどうなっているのか?おそらくは脚外面とベースプレートの間には無収縮モルタルを充填する構造となっていて、ベースプレートなどが型枠代わりになっているのでしょう。そして周辺部はシール材での仕上げ。
 デザイン的に無骨にならないように、ベースプレートがリブプレートから張り出しが大きくならないように(おそらくは製作後にグラインダ仕上げ?)しているのもきれいな仕上がりにつながっています。こういったなじませ方もあるんだ~と勉強になります。

脚外面との合わせ込み

 機能面としては、PC鋼棒とアンカーボルトに機能を分けているようです。上部工が衝突した時に最も力を受けるのは、一般的には最上段のアンカーボルトです。円弧上部分の主鉄筋の間隔は円弧外側に向けて狭くなっていくので、アンカーボルト径の制約が出てきてしまいます。そこで、偶力としての引張力はPC鋼棒に置き換え、また、ブラケット側では圧縮力を伝えるようにして、アンカーボルト径を低減していると思います。
 狭い空間の中で、うまく機能を分けて配置してますね。

ブラケットとPC鋼棒

 このタイプとなると、下部工ブラケットの位置(誤差)が上部工とのクリアランスを決めてしまうので、位置調整が難しそうです。現場での測定結果での製作としても、気を使ったのではないかと思います。
 あとは位置決めのために、一番外側のアンカーボルトのねじ切りを長くしておいて、ベースプレートの向こう側(充填モルタル側)に位置決めボルトがあるとか?なんてことを想像しながら。

鋼製ストッパーを下方より

 比較対象として、下部工ブラケットと円柱橋脚の間が無収縮モルタルのみのケースの写真をおひとつ。

下部工ブラケットと円柱橋脚の無収縮モルタル部

 下側の型枠の当て方って、現場で面倒な印象もあり、勉強になったアイディアでした。ん?製作側泣かせ?