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下部工検査路のジレンマ

 標準図通りには進まないよ、となるのが付属物関係の常。補強・補修工事の設計の終盤に、取り付ける場所がなくて悩むなんてことも。
 検査路は一般の方は通ることはないとはいえ、作業をされる方にとっての必要十分なスペースを取る必要があり、とはいえ、いろいろと取り付けられた箇所では、その配置に悩まされます。それぞれ橋での判断もあるので、ある程度、正解の範囲の広さも出てきます。
 道すがら見かけた検査路のうち、苦労話が出てきそうな検査路を思い出しつつ、ご苦労をお察ししたいと思います。

写真1:中空床版橋直下の検査路

 中空床版橋の場合、写真のように橋座面のすぐ上に上部工の下面があります。下部工天端から100mm下がった位置に手すりがあり、手すりから歩廊面までが1100mm。支承部の高さは・・・と考えると、中腰よりも下がり気味くらいの姿勢になりそうです。上部工反力も小さいとなれば橋脚張り出し部の高さも小さく、検査路の支持金具は写真のようなL字型になります。検査路の設計でもスペースの制約に困っただろうと想像しています。
 なお、こちらの橋は水平力分担構造も設置されているので、身体の硬い方は大変そうですね。

写真2:既設設備との取り合い部

 写真2は既設設備や設置物との取り合い部でのご苦労です。確かに下面側を使うと設置できるなと納得です。現場の方は、支持金具のレベル調整がちょっと大変そうです。少し調整代を取りながら、樹脂パテを使って調整という感じですかね。少しくらいずれても検査路側でなじんでしまいそうですが、この辺りは見た目でわかってしまう(違和感あり→指摘されてしまう)ので、気を使いますね。おそらく。

写真3:下部工検査路への梯子

 さて、耐震補強設計をすると、縁端拡幅が行われる場合があり、これにともない下部工検査路は取り替え前よりも支間側に位置が変わります。その影響を受けるのが梯子です。縁端拡幅の分、支持金具を伸ばさないといけません。さて、おしゃれに伸ばしたいところですが、デザインは様々。写真3は山形鋼を使って伸ばしています。梯子側も山形鋼なので、カクカクしているものの、わかりやすくシンプルさがあります。

写真4:鋼板巻き立てされた橋脚と下部工検査路

 写真4は鋼板巻き立てされた橋脚に梯子を取り付けた事例です。あまり高くない橋脚と下部工検査路のマンホールの間にささやかに間をつないでいます。橋脚側は溶接するほかないですね。ワンサイドボルトを使うわけにもいきませんし(使えないし)。少しコミカルにも見えますが、なんというかカワイイです。

写真5:水平力分担構造と下部工検査路

 写真5は下部工補強~水平力分担構造~下部工検査路の事例です。
 また細かなところを見てしまうのですが、左側の歩廊拡幅部の爪先板や手すりなど、支柱がないところを溶接で部材をつないでいます。おそらく、昔の検査路のタイプとの折衷案なので、すっきり感があるのだと感じます。溶接しないで分けてしまうと、支柱をあと4本くらい立てないいけませんから。
 以上、見かけた検査路と設計された方のご苦労を想像する個人的感想でした。