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私の美容鍼灸師としての心得

突然ですが、私が美容鍼灸師として心得ていることを書きます…!

『?』を感じて答えを探す

美容鍼灸の歴史を遡ると、実はそこまで古い歴史があるわけではない分野なのです。私が鍼灸学生であった20年前くらいに注目され始め、『美容鍼灸を学ぼう!』と思っても、テキストひとつありませんでした。もちろん、学校の授業でもそのようなクラスはありません。そんな中でも、私は『美容の鍼がしたい』という志がありました。そして、いろいろ資料を探している中で、偶然的にも美容鍼灸を専門としている先生と知り合えることができ、講習に通い、また資格取得後は美容鍼灸院に就職などして、とにかく美容鍼灸の道だけを歩んできました。

通常、何かを学ぶ時にはテキストを使うと思います。まずはそのテキストをとことんマスターするのではないかと思いますが、当時はその道標となるテキストがないわけです。そうなると、どうするのか。自分の中で芽生えてくる、小さな疑問の答えをひとつひとつ探していくしかないのです。鍼灸は鍼灸のテキストを読み、美容は美容皮膚科の本を読み、時にはアロマ関係の本も読み…。鍼灸師になってからは、お客様のお肌を実際に診させて頂きながら、常に自分の中での問題と対話してきました。とても時間のかかる作業でした。仕事をすれば、それだけ疑問や問題はどんどんと増えていきますが、『わからない→探す・調べる→実行する』を繰り返し、今現在では美容に関する問題に対して、鍼灸師でできるアプローチは大まかに見つかったと思っています。(小さい『?』は湯水のように湧いてきますが…)もし当時から美容鍼灸のマニュアルがあれば『この場合は→これ』と当たり前のように定義づけられてしまい、自分で『?』を感じて、自ら考えて探すということはしなかったでしょう。ない時代だったからこそ、気付いて考える力が鍛えられたと思っています。これはあとに続くTipsにも直接関係する、大事な能力です。

美容鍼灸師でできることと、できないことを知っておく

『鍼灸師でできるアプローチ』と表現したのは、やはりどんなに足掻いても皮膚科医、美容外科医には勝てないからです。やはり、鍼灸師と医者ではできることには雲泥の差があります。
例えば、ケミカルピーリング。皮膚科医では、濃度の高いピーリング材が使えますが、鍼灸師ではエステティック使用のものしか使えません。にきびなどへのアプローチも、日常的に使用してもらうものとしては、やはり化粧品よりも塗り薬の方が効果的です。シミに関しても、皮膚科でレーザーを当てた方が確実です。私は美容皮膚科兼エステティックでエステティシャンとして勤務していた経験もあるので、そのあたりのメリット・デメリットも知っているつもりです。サロンでお客様に対しても、『鍼灸でできるものはできる、できないものはできない。皮膚科のが効果的だ。』など、正直なことをお伝えしています。鍼灸は自然治癒力に作用して疾病を改善するもので、神秘的なイメージもあったりするところからか、比較的何にでも効くようなイメージがあります。ですが、美容に関しては特に『効くところと効かないところ』は非常にはっきりしています。ですので、顔に鍼を刺せば、アプローチする問題に対して期待の効果が現れるかというと、必ずしもそうではないと考えています。

美容鍼灸といってしまえば一言ですが、実際に美容に関する悩みというのはかなりたくさんのジャンルがあります。シワの悩み、ニキビの悩み、毛穴の悩み、シミの悩み、たるみの悩み…。実にたくさんあります。お肌の悩み、お顔の悩みを打ち明けられた時、『美容鍼灸では、あなたのココは改善できるけれど、ココは皮膚科でないと無理。』と、はっきりお客様にお伝えできるでしょうか。『美容鍼灸はお肌の代謝がよくなるので、効果が期待できますよ。』と、どんなお悩みに対しても、ポジティブに答えていないでしょうか。確かに可能性としてはゼロではないでしょうが、自然治癒力を後ろ盾にした、少し無責任な返答にも聞こえてしまいます。

美容鍼灸以外の肌へのアプローチを知っておく

では、正直に『美容鍼灸ではできません』といって、お断りするのが正解なのでしょうか。それは、せっかく頼りにして来てくださったお客様に対してガッカリさせる結果になってしまいますし、なにより経営面から見ても痛手です。それを避けるためにも、『そのお悩みには美容鍼灸よりも、〇〇の方が合いますよ』と、別の武器を用意しておくとよいでしょう。
例えば、シミのお悩みについて。東洋医学では、シミは血流の悪い方(瘀血)に生じやすいと言われています。もちろん、血流を改善するために、美容鍼灸や全身治療をするのも効果的ですが、それだけでシミが消えてくるとは思えません。ちなみに私は、サロンにてイオン導入機を導入しています。イオン導入機は、皮膚科でもエステティックでも取り入れられている美容機で、体に微弱電流を流すことで美容液成分(一般的なシミの場合はビタミンCを使用します)を表皮の一番奥まで浸透させることができます。表皮の一番深い部分は基底層といい、赤ちゃんの肌細胞を産生する基底細胞とメラニン色素を産生するメラノサイトが存在します。本来、メラノサイトは紫外線を感知した時にだけメラニンを産生するのですが、そのシステムがバグって過剰にメラニンを産生してしまうのが、シミという現象です。ビタミンCは、できてしまったメラニンを漂白するはたらきがあるため、ビタミンCを基底層に届けるイオン導入は、シミに対する効果的なアプローチであることは容易に想像がつくかと思います。
このように『お肌の悩みに本当に必要なものは何か』を考えたあとに、それと肌代謝や自然治癒力を促進させる鍼灸治療を組み合わせることで、より相乗効果を狙える的確なコースをお客様にご提案することが、美容鍼灸師に必要になると考えています。

素肌を見ること、触ることの大切さ

『的確なコースをご提案する』と言いましたが、これは簡単なことではありません。それは『長い経験が必要でしょう』とイメージした方が多いかと思いますが、もっと簡単なことで、それはズバリ『お化粧』です。メイクです。ご来店頂いたときのお客様はお化粧をされていることがほとんどです。パッと見たお顔と、実際の素肌では、随分印象が変わってくることは少なくありません。開業当初、私のサロンでは美容鍼灸だけのコースは設定せず、美容鍼灸とフェイシャルトリートメントを組み合わせたコースのみを提供していました。フェイシャルトリートメントを組み合わせていた理由は、リラクゼーション目的(鍼と相対する要素)や化粧品の有効成分を浸透させるなどの目的だけではなく、クレンジングをすることで素肌を診る目的、実際に触ることでテクスチャーを確かめることができるなどの触診に近い目的も兼ねていました。こうして、お客様のお悩みに関するヒントを集めています。美容鍼灸のみのコースですと、刺鍼部分のみアルコール消毒をする程度で、クレンジングをすることはありません。また、お顔を点(指先)で触ることはあっても、面(手のひら全体)で触ることはないでしょう。これでは、お客様の本当のお肌質を知ることはできず、こちらも的確なご提案をすることは難しくなります。普段は自分のお肌しか触る機会がないでしょうが、たくさんのお客様のお肌を触ってみると、それは十人十色であり、全てのお客様に同じアプローチが通用するわけがないと実感できるはずです。

自分が感じる『美しさ』のセンスを磨く

それから、自分が『美しい』と思うセンスも養っておく必要があります。自分の目指す『美の基準』といったらいいでしょうか。人によって、『美しい』と感じる基準は大きく異なると思います。私の場合は、鍼灸師という元々全ての人類が持ち合わせている自然治癒力をサポートするという仕事柄、自然の摂理からあまりにも逸脱した美が苦手です。わかりやすくいえば、美容整形のようなものだったり、あまりにも過剰な美容だったりするものです。例えば、私はシミをつくらせないために、過度に日焼けをすることを避けるのはナンセンスだと思っています。太陽を浴びることで、ビタミンDが合成されたり、セロトニンの分泌を促すことで有名です。シミができるのを恐れて日光を極端に避けることは、さながら健康であることも避けているようなものです。私は、こういったところに違和感を感じます。

また、フランス人からも学ぶことがあります。私はフランスが好きで度々足を運んでいるのですが、フランスの女性たちは、ビーチで積極的に肌を焼いています。どんなに体がぽっちゃりしていようが、お腹が出ていようが、ビキニを着て、肌を焼いている女性たち。シミよりも、バカンスを楽しむこと!体型よりも、バカンスを楽しむところ!フランスのそういうところが、好きなんです。

私の中の美しさのアイコンはというと、女優の長谷川潤さんです。ナチュラルな中からも美しさを感じることができる彼女は、私の憧れです。長谷川潤さんがハワイでサーフィンをしている姿を見た時には、もはや憧れを超えて尊敬の思いでした。我々、一般人よりもよほど肌に気をつけなくてはいけないだろうに…。でも私は、そういったところに強い美しさを感じるのです。

寧ろ顔面の美しさは内側から湧き出すものでしかなく、私の仕事など、それにちょっと手を加える程度でしかないとも思っています。美容の仕事をしながらも、こんなことをいうのはどうかと思うのですが、美しくいるために何か自分のやりたいことを我慢するようなことは、ナンセンスだと思っています。ただし、全部を甘くするわけではありません。サーフィンしてもいい、でもそのあとのケアは必要。甘いものを食べてもいい、でもその後はジムに行く。美しさを保つことは、コツコツした努力が必要なことです。そこが一番難しいのです。その努力に伴走するのが、私の仕事だと思っています。

美容というカテゴリの中でも、私の目指す美容はこのようなものです。少し大雑把な美容観かもしれませんね。でも、自分の美容観を明確にしておくことで、お客様もサロン選びがしやすくなりますし、なにより自分も接客においての苦しさを軽減することができます。触れ合う仕事が故、お互いが心地よい関係でないとお互いが苦しいですからね。

このマガジンを立ち上げた目的

今回、なぜ急にこのようなことを題材に記事を書いたかというと、私の美容鍼灸の概念をnoteにまとめていこうかと考えています。お肌のお悩み別に、生理学的な概念と、一般的に考えられるアプローチ方法、私の鍼灸でのアプローチ方法等を書いていきます。予定としては、有料記事とする予定です。また、イメージがつきやすいように動画もSNSにアップしていく予定で、さらに将来的にはセミナーなども開催できたらいいなぁと考えています。

鍼灸の歴史を遡ると4000年の歴史…といいますが、長い割にはマーケット的にはかなり小さなものです。近年は美容医療がかなり流行しているように感じますが、私は美容鍼灸が目指すナチュラルな美しさ、自分が持つ本来の美しさを引き出すところがとても気に入っています。私自身も、自分の美容は鍼と自分のサロンにあるものしか使っていません。自分で言うのもなんですが、相当顔が変わった気がします。昔の私を知っている人は、『もしかしたら顔いじったとのでは?』思っている人もいるかも…(笑) 確かに20代の頃の肌のハリはなくなってきましたが、私は今の自分の顔つきを気に入っています。

今回の取り組みで、同じような美容観を持つお客様はもちろん、これから美容鍼灸師としての経験を積んでいきたいと考えているみなさんとのご縁にもなればいいなぁと考えています。どうぞお付き合い下さいませ!(まずは執筆が続くように頑張ります〜!笑)

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