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『理由』
虫。
それは、人によっては好き嫌いが別れる存在である。ちなみに、私は余裕だ。が、しかし弟は、その虫が嫌いである。そんな弟も、昔は一緒にバッタや蝶々を捕まえていた。なぜ、嫌いになったのか。理由は良く分からなかった。
「なんで、そこまでして、虫が嫌いなの」
雑草取りのとき。虫がいるから、と雑草取りを全然しない弟にしびれを切らした私は、聞いた。弟は、少し眉を寄せて答える。その答えは、意外なものだった。
「だって、虫をうっかり叩くと、赤い液体が出るんだもの。ばっちいから、僕、触りたくない」
赤い液体とは。満腹の蚊を叩いたときに出る、赤い液体―吸われた血のことか。私は呆れて、
「馬鹿馬鹿しい」
とため息をつく。すると、弟はむすっ、とした顔で怒った。
「本当に、赤い液体が出るんだもん。蚊だけじゃないよ。蝶々も、ありんこも、潰れると赤い液体が出るんだよ」
「はいはい、出るかもね」
そう言って、私は弟との会話を半強制的に終わらせた。正直、意味が分からなかった。蝶々や蟻から、赤い液体が出る?そんな訳がない。せいぜい、黒いインクのようなモノが手につくくらいだろう。ああ、きっと嘘だ。嘘に違いない。
もぞもぞ。
その時、足元で何やら、くすぐったい感覚に襲われた。見てみると、黒い少し大きめの蟻が、ふくらはぎをつたって、上に登ってこようとしている。私は、それをペチンと右手ではたいた。ぐちゃり、と手のひらで潰れる音がしてから、手を足から離す。離して、手のひらを確認すると、いつもの黒いインクではなく、真紅の赤に染まっていた。ぎょっとして、先程まで、蟻が生きていた場所を見ると、そこも真紅に染まっている。
「な、なんで」
魚のように口をパクパクさせながら、私は混乱した。赤い液体。弟が言っていたことは本当だった。何故、どうして。理由を問う単語のみ、息を吐くたび零れる。いや、夢かもしれない。うん、きっと悪い夢を見ているんだ。私は自分にそう言い聞かせて、もう1度、手のひらを見返した。手のひらは、
やはり真紅に染まっていた。
そして、よく目を凝らすと、赤い液体の上に白いものがちょこんと2個、乗っていた。なんだろう。両目共に、0.6の視力で、必死に白いものを見つめる。そうか、だから弟は―。ピントが合うと、私は弟が虫が嫌いになった理由がやっと理解できた。
それは、その白いものは、“2個”ではなく、“2本”だった。
白く、千切れた、
人間のような、2本の、足。
(あとがき)
雑草と戦闘しながら、考えたお話です。少しホラー風?になりました。ちなみに、弟が、虫が嫌いなのはマジです。本当に困ってます😓。
「いやぁぁぁ」と言って、シジミチョウから逃げる弟を見たときには、すごく苛つきましたね……。知らない方は調べてみると分かりますが、シジミチョウはとても小さな蝶々です。これを怖がるのか??多分、シジミチョウから逃げる弟の気持ちは死んでも理解できないでしょう……😌
最後に、読んでくださり、ありがとうございます。また、ぼちぼち書いていきますので、読んでいただけたら、嬉しいです(*´ω`*)
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