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半夏生の小径(森町鍛治島)を歩く

半夏生(はんげしょう)は「半化粧」ともいって、夏になると上部分の葉っぱが白粉をつけたように白くなる。花部分が小さいので、虫を集めるために葉っぱが花のように変色するらしい。そうして白くなった葉っぱは枯れることなく、また緑に戻っていくというから不思議だ。

初めて見る半夏生は一見すると、葉が白くなっているのか、日差しの照り返しで光っているのかよくわからなかった。ドクダミのような葉っぱで、湿地に咲いているところも似ている。調べるとドクダミ科だった。

森町北部にある鍛治島地区の奥には、四方を山に囲まれている小さな集落がある。県内でも有数の半夏生の群生地として知られ、7月上旬は夜間のライトアップも行っているそうだ。狭い道を通り、少し開けた駐車場に車をとめて降りると、思わずため息がもれるような日本の原風景が広がっていた。原風景だなんて言いながら、そんな場所は知らないし生活していたこともない。昔話の絵本や風景画で見た記憶などが共鳴して、愛しさ混じりの懐かしさを呼び起こすのだろう。

山あいに広がる畑を小川沿いに進んでいくと、いつの間にか湿原になっている。周囲に街灯もないのでホタルや星が綺麗に見えそうだと思った。

起伏はないが森に面しているので、山の中を歩いているような気分になってくる。道の途中には小さな石のお地蔵さんが立っていた。

半夏生の群生エリアには桟橋があり、より近くで半夏生を見ることができた。満開(というのかわからないが)にはまだ早い感じで、白くなりはじめている葉っぱが多い。

道がどこまで続いているのかわからないので、奥へと進む。新しく作られたらしい木造橋があって、そこにも半夏生が繁茂している。さらに進むと下り坂になった。小川は滝のようになり坂は崖に、いつの間にか落差のある道を下っている。ようやく下り終えたと思うと、木々の隙間から建物が見える。看板には来た方向への矢印と「半夏生の小径」の文字。どうやら山の反対側の入口に来たらしい。仕方がないので来た道を戻っていく。行くときに畑仕事をしていた老婆は腰を折り曲げてまだ作業をしていた。

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