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ルパンと紅葉の季節

11月29日。ららぽーと磐田で『ルパン三世 カリオストロの城』のリバイバル上映を見てきた。何度も見ている作品、そのたびに完成度の高さと面白さに感服する。

本作には無駄な部分がない。かといって肩ひじ張るような堅苦しさがあるわけでもない。飄々としたルパンの行き当たりばったりが、したたかに計算された勝利への行動になっている。コミカルと緊張のバランスで綱渡りする物語が、まっすぐフィナーレへと向かっていく。始終、哀愁ただよう雰囲気があるのもいい。

小國神社【静岡県周智郡森町】

小國神社、参道

映画を見たあと、足を伸ばして小國神社を参拝。閑散とした参道に、木々の隙間からさしこむ日がいくつもの光の線を作っていた。

拝殿を右に抜けると小川があり、川沿いを北へ進む。橋のかかっているところまで、往復20〜30分ほどで歩ける小道になっている。

川沿いの道を奥まで歩く人はほとんどいない。一足ごとに深まっていく静けさと共に、緑と黄と紅のなかを歩く。川辺にはモミジに混じってイチョウが立ち、あたりに黄色い葉を散らしていた。

紅葉は例年よりだいぶ遅い。色づきはじめた木が多いなかで、真っ赤に染まっているものがひときわ目立つ。

「裏を見せ 表を見せて 散るもみじ」(良寛)

葉っぱの表は目にうつる部分。裏は観ようとしなければ観えない部分。詩人でもあった僧侶の目は、モミジを通して自分、人、そして社会の表裏を観ていたように思える。本質を観るには、意識的に裏側まで観ようとする姿勢が必要だ。

晩秋の斜陽に照らされるモミジに、ルパンの持つ二面性が重なる。彼の陽気な明るさのなかには、いつも影がある。盗んでは逃げて、どこにも落ち着かない。未練を残しながらもひょうきんに笑い去っていく姿に、本質的な孤独が見える。その明るさは、裏側にたくさんの影を忍ばせているのだ。

駐車場の近くまで戻ってきた。森の内側から樹間のむこうに光る風景を見ていると、夢の世界に迷い込んだ気持ちになる。暗がりから見るとき、光はいっとう明るく映る。

購入したパンフレット、裏側は哀愁漂う渋いカット

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『ルパン三世 カリオストロの城』 - 原作:モンキー・パンチ (C)TMS

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