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【不思議な体験談】不登校の僕に、死んだはずの人物から届くパラパラ漫画

小学生のとき、授業中によくパラパラ漫画書いてました。
教科書は200ページくらいですから、なかなかの超大作を何本も。

とはいっても下手なせいで、描く場所が微妙に違ったりして
うまくいかないんですよね。

クラスでパラパラ漫画うまい人とかいて。

キレイに動くだけじゃなく、
ちょっと笑えたり
ちょっと感動したり

そんなパラパラ漫画描けるのが羨ましかった
という記憶があります。

今回はそんなパラパラ漫画が登場する、ちょっと不思議な体験談です。



〈完成版の動画〉


〈本文〉

これは僕が中学時代の話で、今まで誰にも話せずに一人で悶々と抱えていた話です。

誰が始めたのか、いまだに分からないんですが、ある時から急にクラスの中で僕のことを、「今日の山田」と称して教室の後ろの黒板に壁新聞みたいなものを書く人が現れたんです。
内容はごく普通というか、そのままで

「今日の山田。ジャージの裾が長すぎて上履きの中に巻き込まれる」
「今日の山田。給食のひじきの大豆だけを食べる」

最初は本当に良かったんです。
僕も笑っていたし、正直いじってくれてありがたいぐらいに思っていたんです。
でも、そういうのって何でも笑いのセンスの無い奴が加わり始めると一気にコンテンツとして廃れていくというか、いい言い方してますけど、まあ“いじり”から“いじめ”に変わっていったんです。

最終的に根も葉もない最悪の下ネタ的ないじりをされて、さすがに我慢できなくて自分でその黒板を消してしまったんです。

そしたらそれが、いじめっこ達の逆鱗に触れましてボッコボコにされて二度と学校に行けなくなってしまいました。
まあ、これは本題では無いです。

で、僕の不登校生活が始まったわけですが、クラスの中でも変わった人がいて僕に毎日プリントを届けてくれる人がいたんです。

名前は書いてないので、わかりませんが筆跡で同じ人だということは分かりました。

だいたいいつもプリントの右上の方に「今日の相沢」「今日の石川」「今日の上野」なんていう風に、僕の不登校の原因となった「今日の山田」を真似したコメントが書いてあって
それが、初期の「今日の山田」の雰囲気だったので僕もだんだん楽しみになっていったんです。
しかもいつも「今日の〇〇」の隣には意味不明な棒人間の絵が添えられていました。

あれは夏休みに入るタイミングの日だったと思います。
いつもよりプリントの数が多いのに、棒人間の絵だけは全てのプリントに書いてあったんです。
こいつ本当に暇だな、なんて思いながらもちょっと嬉しくて一個ずつ見たんです。
そしたら、すこーしずつ動きが違うことに気がついて、プリントを一気にパラパラしてみたんです。

案の定、棒人間が動き始めたんですよ。
それで、今までのプリントも合わせて全部、右上を揃えてパラパラしてみたんです。

言葉を失いました。

棒人間は一人でしたが、右に左に吹き飛ばされるほど殴られていて最後のページは横たわって倒れていました。

最後のページの棒人間の隣に「今日の俺」と書かれていました。

僕はどうしてもその人のことが気になって、夏休みの初日に学校に行くことにしました。
先生は夏休みになったら登校してきた僕に驚いていたけど、その後の話に本気で驚いていました。

僕は単刀直入に毎日プリントを届けてくれた人が誰なのか聞きました。
すると先生は、僕の家の近所の生徒が当番制で届けてくれていたというのです。

僕はちょっと納得がいかなくて、今までのプリントに書いてある「今日の〇〇」を見せたんです。
すると先生は「相沢、石川、上野?……こんな苗字のやつウチのクラスにはいないけどなあ」と言うんです。

僕と先生のやりとりを見ていた、この学校でも最長老の古川先生が血相を変えてやってきました。
そして古川先生は「相沢、石川、上野、上島、太田、片岡、柴崎…」と名前を呼び始めたんです。
確かに「今日の〇〇」の順番はその通りに続いています。

古川先生は深いため息をつくとこの学校で起こった最悪の事件のことを教えてくれました。

15年ほど前に夏休みに入る直前に自殺した生徒がいるそうです。
学校はいじめが原因だと認めなかったそうです。
古川先生は引き出しの奥から封筒に入ったプリントの束を出して僕に見せてくれました。

「当時の校長に口止めされてね」

僕は古川先生からプリントの束を受け取るとパラパラとめくってみました。
すると僕のと同じ棒人間が最後は倒れて死んでしまいました。

僕は恐る恐るこの生徒の名前を聞きました。
生徒の名前は「山田」。僕と同じ苗字でした。

正直、気味が悪くて当時はこの話を他の誰かに言うこともできなかったんですが
今、大人になって振り返ってみると、「山田くん」は僕に気づかせてくれたんじゃ無いかと思います。
逃げていいんだと。
あのまま僕も学校に行っていたら、あの棒人間みたいになっていたのかもしれません。

僕はその後も学校には行けませんでしたが、おかげ様でパラパラ漫画の腕前だけは「山田くん」に負けないくらい上達してしまいました。

そして今、僕は「本を売るなら♩♫♩」でお馴染みのあの店で働いています。
今や店長です。

そんな僕がこの仕事をしていて良かったなーと思うことが一つあります。
店内でずっと売れずに残っている本にこっそり魔法をかけるのです。

今日は超難解な哲学の本が常連の中学生ぐらいの男の子に売れました。
彼は学校に通っていないのか、いつも平日の昼間にやってきます。

今日は機嫌がよかったのか、会計を終えると
その哲学の本をパラパラと捲って僕に見せてくれました。

僕は嬉しくて思わず声をかけてしまいました。

「読み終わったら、君も “描いて” 持ってきてよ」

彼は強く頷いて店を出て行きました。

今日も僕はまた売れない本を見つけては
こっそりパラパラ漫画の魔法をかけています。

おわり


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