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ケンチク物語2 北九州市立中央図書館

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たまごが先か、にわとりが先か。。

人類の終わらない論争だと思います。

建築設計でいうなら、住居ならば間取りが先か、美しい佇まいを考えるのが先か。。といった話です。


今回は、北九州市立中央図書館を紹介していきます。

有川浩さんの小説が原作の実写映画「図書館戦争」でも舞台となり広く有名となった図書館です。


福岡県北部に位置する北九州市は、南の博多市と並ぶ都市で、中でも小倉は都市でありながら歴史的なまちです。

この北九州市立中央図書館は、紫川沿いに建ち、小倉城の南に位置する公園内にあります。図書館・文学館・視聴覚センターの3つの文化ゾーンが全てヴォールト(アーチ状の屋根を持つ建築形式)の中に配置されています。

設計は磯崎新さんです。あまり一般的には知られていないかもしれませんが、建築界の巨匠のひとりです。故丹下健三の弟子にして、後に東京都庁のコンペ(設計競技)で張り合ったことや、建築の批評論を多く著書に残されており、ポストモダンという潮流(流行の流れ)を引っ張ってきた建築界の大人物です。

竣工は、1975年で、45年(執筆時2020年4月)たった今も、よく手入れされているため、内外装ともきれいです。


冒頭の写真のように、カマボコのようなアーチ状の屋根が印象的な建築です。

僕が訪れた時、最初に抱いたのは、キンベル美術館みたいな形態だなという印象でした。カマボコを曲げたり、重ねたり、立体的に展開した建築だなあと。

(キンベル美術館は、近代建築の巨匠ル・コルビュジエと並ぶルイスカーン設計のアメリカ・フォートワースにある美術館です。(最近はレンゾ・ピアノの新館もオープンしました。行ってみたい!))


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キンベル美術館とは違い、カマボコの正面アーチ部分は大きな開口部となっており、閉鎖的な印象ではありません。

このアーチが素敵な建築の中に早く入ってみたい!と思わせる外観です。


RIMG0778のコピー

カマボコの中身は2層構造となっています。先ほど紹介した開口部の部分が閲覧室(勉強室)となって、うまく自然光を取り入れられています。このトンネルのような空間は奥が開口部で明るいため、奥行き感が出て、見た目より広く見えます。



RIMG0748のコピー

RIMG0747のコピー

ちょうどカマボコが折れる部分は、複雑な天井をしています。木の幹のように等間隔で連続した屋根を支える部材が空間の印象を決定しています。

外観は、大味な印象でしたが、内部空間はとても繊細な印象で、建築を見ながら歩き続けても飽きがありません。

これは、アーチ屋根をスケッチしようと思いました。


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この屋根を支える鉄筋コンクリートの部材は、1,350mmのピッチ(間隔)で配置されています。また、部材は先細りにデザインされ、端に50mmのスリットが開けられており、部材を細く見せる工夫がされています。

ピッチがもっと長ければ、部材が大きくなり、繊細な空間ではなくなります。ピッチがもっと短ければ、部材は小さくなりますが、部材が増え空間がうるさい印象となります。

要するに、部材間隔と断面の大きさのバランスがとても良いな、と感銘を受けました。


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アーチ屋根を支える構造体は、先ほどの屋根部材よりもピッチが大きいです。このデザインは、廊下の開口部や、換気窓の広さにもちょうどよかった寸法なのでしょう。


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この建築は、構造が、廊下や展示方法などといった機能を満たしながら、空間を伸びやかに見せるデザインとなっていました。


しばしば、形態(建築全体のかたち)のオモシロさがポストモダン建築(ここでは、1970年代くらいからの建築思想のひとつ)の特徴の一つとされています。

私は、形態の主張が前面に出たポストモダン建築が好きではありませんでした。

しかし、この建築では、「形態を実現するための構造=機能や使いやすさがよく考えられた構造」がよくデザインされていまして、とても好きになりました。


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ちょっと難しい話になりますが、たまごが先か。。の話をします。

建築を設計する過程には、形態→構造→機能の手順と、機能→構造→形態の手順と、大まかには2つ流れがあると思っています。どちらが劣り、どちらが優れるといった優劣はありません。

有名建築家の建築には、しばしば前者=形態→構造→機能の流れだな、と思うものがありますが、必ずその工程がフィードバックされているようにスケッチを描いていて感じます。

形態→構造→機能→形態→機能→構造...のような、繰り返されたり、戻ったりの流れによって、デザインが洗練されていった結果が建築に表れているのかもしれないな、と。



それには凄い熱量を設計に込めているはずで、僕もそんな設計のスタイルで建築していきたいな、と思っています。


ぱなおとぱなこ



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