心は豊かですか

 「心の豊かさを、もっと」テレビが問いかけてくる。振り向くとコマーシャルのワンシーン。今どきのテレビは、こんなコマーシャルもあるのかと、ちょっとびっくり。
 コマーシャルはJT企業のもので、タバコ専売会社が今は医療品や食品などの分野にも進出していると初めて知った。時代はこうも変わるものかと感じ入る。
 さて、コマーシャルの主人公は半世紀以上も誰とも話をせず生きてきた鬼。人にあらざる鬼は、ある日、道端でお地蔵様を洗っているおばあさんに出会う。洗うことで、心が豊かになると教えられた。
 鬼は、人間の「心の豊かさ」を知りたくなり旅に出た。
 ある時、ランドセルを背負った少女と出会う。「とりあえず笑おっか」と言われ、戸惑いながらも笑顔を作ろうとする鬼。最後には、頑張ったご褒美として、少女から贈り物をもらう。道端に咲いていた花で作られたブーケだった。
 映像の中に、鬼が探している答えは、明確には表れない。あなたは何かを感じたかと、問いかけているのか。
 スマホを検索すると、心は、理性、知識、感情、意志などのもとになり、感情はその時の気持ち、外からの刺激によって引き起こされる。また、豊かな心とは、他人を思いやる、命を大切にする、感動する心と出てくる。
 JTには、「心の豊かさを、もっと」というパーパス(企業の存在意義)があるらしく、未来へ向けて「心の豊かさ」を育んでいこう。その出発点は、まず自分や誰かに問うことから始めるという考え方らしい。
 人は、心と一緒に感情が伴う。その中で哀しみは常々の注意が必要であり、扱うのがもっとも厄介だ。静かに、そしていつのまにか体を支配し、覆われた結末には自死もあり得る。何気ない言葉やしぐさが、他人への大きな哀しみとなることもある。 
 豊かな心があれば、感情を理性で強制的に抑制せずとも、怒りや哀しみを喜びへ、自然に変えていくことが可能になるかもしれない。
 心の豊かさの恒久的な答えなど無いだろう。そして、今、目の前に鬼が表れて問うて来たら、なんと答えますか?


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