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アポカリプスデリバリーピザ

 どうやら世界は、本格的にアポカリプスを迎えているらしい。

 アメリカ東海岸ではゾンビが大量発生し、西海岸では様々な特殊能力や形状を持った鮫が人間を食いまくってる。南アメリカ大陸には連日UFOが出現し、空軍と空中戦を繰り広げているし、中東の砂漠地帯で確認されるサンドワームの数は増える一方だ。ドラゴンの襲撃に見舞われたヨーロッパでは、新たに北欧に出現した霜の巨人の驚異も加わり、状況は混迷を極めている。

 地球温暖化や第三次世界大戦による終末を想像することはあっても、まさか、神話や創作の世界から飛び出してきたような存在が、一斉に人類に攻撃を仕掛けてくるなどと想像できた奴がいただろうか? 少なくとも俺はまったく想像していなかった。奴らはどこからやってくるのか? どうして人類を攻撃するのか? 世界中の英知を結集しても、未だにその答えに辿り着けてはいない。

 世界各地では今日も様々な脅威が出現し、その度に人類は大きな犠牲を払う。もはやこの世界に安住の地など存在しないのだ。

 俺が暮らす日本でも驚異は出現しているが、他国と比べて襲撃の発生が遅かったので、日本ではまだギリギリ経済活動が生きていた。コンビニは二十四時間営業を続けているし、俺は自宅にピザをデリバリーしてもらうためにサイトのメニュー表を凝視している。せっかくの週末だ。一番豪華なピザにしようか。

「電話か」

 嫌な予感がした。だけど出ないというわけにはいかない。

『山田隊員。怪獣が出現しました。至急本部まで』

 同僚の隊員からの緊急招集だった。日本に現れた驚異は、特撮作品に登場するような巨大怪獣だ。防衛隊の隊員として、俺は休日返上で立ち向かわないといけない。残念だがピザの注文はキャンセルだ。怪獣を倒さないと、落ち着いてデリバリーピザも頼めない。
 
 戦死するのが先か。世界が滅びるのが先か。
 俺はこの終末にあと何枚ピザが食えるのだろう。

 【続く】

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