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「Liberty」 No.6

「これ…どこに入れたら素敵だと思います?」

水野さんが白い小鳥のモチーフを差し出して、
こちらに見せている。

私はツリーと水野さんに近づいた。

「私だったら、このてっぺんの星の近くにするかな。小鳥がすぐに飛び立てるように。」

水野さんはうんうん、と2回頷いた。

「それは素敵な案ですね。
小鳥は自由に空を飛んでいた方が、きっと、
幸せです」

私は幼い頃に、母とクリスマスツリーに飾り付けをした時のことを思い出していた。
幸せで楽しかった筈なのに、
何故か息苦しくなった。

優しかった母。
だけど、それは私が母の言いなりになっている時だけだった。
私の意見は尊重されたことはなかった。

「片瀬さん大丈夫ですか…?
気分、悪いですか?」

水野さんが心配そうに、こちらを見ている。

「ううん。ちょっと嫌なことを思い出してしまって。ごめんなさい。」

慌てて笑顔を作り、小鳥をてっぺんの星の少し下に結んだ。

「これで、いつでも自由になれるね」
私が呟くと、

水野さんは、優しく目を細めた。

「小鳥も、人も、自由な方が幸せです。
籠の中では心が死んでしまう。
まあ、僕みたいに、自由に年中休んでるのも、
どうかと思いますが」

私は水野さんの目を見つめた。

「私も自由になりたいです。」

水野さんは、私の目を真っ直ぐ見て言った。

「大丈夫、なれますよ。
籠の中にいた小鳥だって、外に出れば、
空を自由に飛びまわります。
最初は少しこわいかもしれないけど、
大丈夫です」

ツリーに結んだ小鳥のモチーフが、
ゆらゆら揺れていた。

ーーーーーーーーNo.7に続くーーーーーーーー






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