「Liberty」 No.1
良かった…開店してる。
店の外に並べられた沢山の多肉植物を見て、
ホッとする。
最近引っ越してきた街で見つけた、
お花屋さん「grow」は、
店主の気まぐれでの休みが多く、
足を運んだのにお店が開いていなくて、
落胆したことが何度もあった。
お店の前まで行くと、奥で忙しそうに動いている店主の水野さんの頭が見えた。
挨拶は後にしようと、台の上に並べられた沢山の多肉植物を見ることにした。
つるつるしたもの、棘のあるもの、丸いもの、
細長いもの…
形も質感も大きさも様々な個性の、
多肉植物がある。
どれも、張りがあり輝いていて、
日々丁寧に世話をしてもらってるのがわかる。
元気に日を浴びて、幸せそうだ。
少し羨ましく思う。
「あれ、片瀬さんじゃないですか!
お久しぶりです」
店の扉が開いて、水野さんが出てきた。
深緑の薄汚れたエプロンをつけている。
(お久しぶりです、じゃないよ…
何度も来たけど、
水野さんの気まぐれで休みだったんじゃない)
心の中で文句を言った。
「また新しい多肉が欲しくなっちゃって。
家に植物があると、
すごく気持ちが癒されるんです」
水野さんは、ニカっと口を横に開いて、
嬉しそうに笑った。
「片瀬さんが、多肉植物の魅力を知ってくれて、嬉しいです。
もうタニラーの仲間入りですね」
なんだか、胸があったかくなった。
「grow」は、慣れない街での生活に寂しさを感じていた私の、心の拠り所になっていた。
ーーーーーーーーNo.2に続くーーーーーーー
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