「メロンソーダ」No.6
スマホの通知音が、小さく鳴った。
キッチンでコップに牛乳を注いでいた私は、
小走りでリビングへ行き、
ダイニングテーブルの上に置いていたスマホを、
手に取る。
画面に小池さんのアイコンが表示されてるのを見て、胸が高鳴った。
『こんにちは。
先日は、紫陽花の撮影に協力してくださり、
ありがとうございました。
次の撮影は、向日葵を予定しており、
また理央さんに被写体をお願いしたいと思っているのですが、ご都合いかがでしょうか。』
私はすぐに、被写体を引き受ける旨の返信をした。
胸の鼓動は指にまで響く程だった。
「何ニヤニヤしてるの?」
急に声がして、ビクッとなった。
妹の茜が、私のスマホを覗き込んでいる。
「ちょっと!見ないでよ!」
私は恥ずかしくて、わざと怒った声を出した。
「まあまあ…。あの人でしょう?
この間撮影から帰ってきてから、
お姉ちゃん浮かれてたもんね」
さすが妹だ。
私のことを、よく解っている。
「まあ、そんな感じだよ」
動揺を隠すため、わざと素っ気なく答える。
「やっと、元彼吹っ切れたんだね!
辛そうだったから、良かったね」
茜は、本当に嬉しそうな満面の笑みだ。
胸が少しチクンとした。
18歳の時に初めてできた恋人と、1年前にお別れをし、辛い日々を過ごしていた。
辛さが少しずつ薄れていき、
心が楽になってきて…
そんな時に、小池さんと出会ったのだ。
ー思い出は、美化できた方がいいー
小池さんの言葉を思い出した。
思い出は美しい。
限りがあるから美しいのかもしれない、とも思う。
「あ、そうだ!牛乳!」
慌ててキッチンに戻る私を見て、
茜がまたニヤニヤしていた。
ーーーーーーーーNo.7へ続くーーーーーーーー
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?