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怒りは一時の狂気である(Horatius)

唐突だが、なぜ私のアイコンが牛なのかをお話ししたい。
私が「丑年・おうし座」かつ、幼少期から食べてすぐ寝る子で
親から「牛」と呼ばれて育ってきたからだ。
そんなおうし座の性格は「のんびり・穏やか・我慢強い」などと星占いでは言われるが、私にはまったくピンと来ない。
唯一、私が「そうだね」と思うのは「怒り」についてだ。
多くの星占いでは、おうし座の人が「怒ると激しい、長引く、頑固」とされている。自分を省みて、まったくその通りだと思う。

予定されていた期限より早く、Xデーがきた。
宙組の全公演中止、および予定されていた組替えの中止。
昨日、「歌劇」の表紙に贔屓が映り、SNSも久しぶりのお祝いムードだったところの翌日の発表で、浮き上がったところを地の底にたたきつけられたような心境だった。
これまでの幾度かの中止については、私自身も「まぁ、仕方ないよね」という気持ちがあった。組子のメンタル、ヒアリングの継続、公演の安全性。
寂しさと残念だという気持ちをにじませながらも、耐えてきた。
全ては、たった一日でいい、東京公演での千秋楽だけでも開催してくれることを祈っていたからだった。

しかし、現実は全日程中止。
中止についてはSNS上では嘆きながらも「仕方ない」と思われる声が多かった気がする。組子を心配し、「待っている」という声を上げる方もいらっしゃった。とても優しい方々だと思う。
けれど、私は違った。
私は、この一連の騒動の中で今がピークで怒りを感じている。
自分でも、怒りを制御できていないことを自覚している。
私はいったい何に怒っているのか?自問してみた。

【「空気」「雰囲気」「世間」という実体のないものが、
人の人生を左右している】
これに尽きる。

当初から、私たちファンは静観を要請され、それを守ってきた。
初期にはご遺族のご意向で故人の名前を出してほしくないとの事だったので、静かに喪に服すのが正しいと思っていたから。
そして劇団が調査に乗り出すと知り、信じて待っていたから。
私たちが聞き分けのいいサイレントマジョリティーに徹している間に、
疑惑の、糾弾の、断罪の声は膨れ上がり、
もう抑えられないところまで来ていた。
そして、いまや起きた事象それぞれの十分な検討はなされないまま、
膨れ上がった劇団への不信感と、処罰感情のみで、
1つの組が、そこに所属する約60名の女性たちが社会的に葬られようとしている。

元々、私が感じているのは「不公平感」だ。
現役のジェンヌは声を上げることができず、
ファンはご遺族を慮って何も言えず、
下劣な週刊誌や過熱したSNSや大義を忘れたメディアの偏向報道により、すっかり世論の印象は決まってしまった。

「人一人がなくなっているのだから当然だ」という言葉。
その亡くなった原因の検討は十分ではない。
そして処罰は民意によってなされるべきものではない。現在進行形で起きているネットやメディア、週刊誌での彼女たちへの誹謗中傷がリンチでなくてなんだと言うのだ。(リンチ:法的手続きを経ないで暴力的制裁を加えること)

「ご遺族の気持ちは」と言われると思うが、
前noteで「公演をしながらでも協議を続けることはできる」とお伝えしたとおりである。
彼女の死を悔やみ、死を悼みながら、
彼女が最後まで立っていた舞台を守り抜く。
それこそが供養になる、という見方だってできたはずだ。
結局、この演目は映像にも残らず、
きっと「口に出してはいけない」忌むべきものとして、封されることになるだろう。
彼女は最後まで、最高の舞台を見せてくれていたはずなのに。

この事態を引き起こしたすべての事象への怒りが渦巻いている。
顔を出さずに真偽入り混じった記事を書いてひたすら分断を煽る週刊誌も、それを聞き齧って騒ぎ立てた無責任な外野も、守るべきものを守れなかった無力な劇団も、モラルのない偏った報道を垂れ流すメディアも、
そして、批判を恐れて長らく声を上げられなかった自分へも。

「こんな気持ち、感情、初めて知った!!
怒っている、怒っている、生きている、私、今!

身体中の細胞がよみがえる
身体中、血潮が駆け巡る

怒り、悲しみ、嘆き
私、生きている!!」
(月組、『BADDY-悪党は月からやって来る』より)

どうか、これ以上の酷いことが彼女たちに起きませんように。それだけが、いまの願いだ。

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