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レトロギャルゲー再訪記(1)「WHITE ALBUM」 美咲&弥生編

気がつけば、また前回から一ヶ月以上…

一応、言い訳させてください。実は今回の攻略ターゲットである美咲、弥生とも、一回攻略に失敗してしまってます。やはりオリジナル版はイベント発生に若干のランダム要素が絡むため、こういうことも発生してしまいますね。なので、今回の執筆にあたり都合4周プレイすることになってしまいました。

また、12月のボーナスでPCを新調したのですが、WHITE ALBUMをインストールしたのは古いPCの方。新しい方にインストールし直すことも考えたのですが、何しろ元々Windows95向けのソフトということで、素直にインストールすることはできない。古いPCに入れたときも、若干の小細工をしたのですが、もう一度同じ事を新しいPCでやるのもちょっと面倒。それに、古いPCはWindows10、新しいPCはWindows11ということで、同じ方法が使える保証も無い。

ということで、いちいち古いPCを立ち上げるのがちょっと億劫になっていたという事情も…

はい、言い訳です。スミマセンでした、許してください。あ、でも一番の要因はやはりギルティg…いやなんでもないです。

…ということで、美咲&弥生編、行ってみましょうか。


澤倉美咲

というわけで、リアルタイムの頃はイチオシキャラだった美咲先輩です。

リアルタイム時のプレイではイチオシキャラだった美咲

まあ彼女のシナリオの感想を言えば、美咲本人がどうこうより、ひたすら主人公・藤井冬弥のクソ男っぷりに胸糞悪い思いをさせられることになった感じですかね。

「一体、誰が、何を、どんな風に間違えてしまったんだ」

とは本シナリオにおける主人公の独白ですが、これが本気で解ってないあたり、やはり真性のクズなんだよなぁと思わざるを得ないです。

誰のシナリオでもそうなんだけど、この冬弥、恋人を裏切っていることに関する罪悪感があまりにも希薄なのがどうしても気になります。この美咲シナリオではとくに顕著。

人間だからそりゃ、心変わりすることもあるでしょう。順番を守れ、筋を通せと口でいうのは簡単でも、実際にそれが困難なこともあるでしょう。しかし、まともな人間なら罪悪感に苦しむはずのこんな状況で、開き直ることすらなく平然としている冬弥という男がマジで理解できません。

美咲は冬弥、由綺、はるか、彰ら「親友四人組」から見て「良き先輩」の立場で、由綺も含めて彼らとの付き合いは長く、深い。冬弥と由綺が恋人関係であることはもちろん知っているし、彰の想いが自分に向けられていることにも気づいています。

そんな中で冬弥に惹かれてしまい、クリスマスに一線を越えてしまった美咲は罪悪感に苦しめられることになります。自分にとっても浅からぬ仲である由綺を裏切り、彰に対しても不誠実を働いてしまったと。彼女は基本的にはお人好しの真面目属性なので、自分の行いを責めてしまい、冬弥とも距離を取ろうとするのです。

しかし冬弥の方と来たら、まるでどこ吹く風で、そんな美咲の苦しい心内を察することもせず、本来の恋人を裏切っているという後ろめたさも見せず、無遠慮に踏み込んでさらに美咲を苦しめているわけですよ。いや、なんでお前じゃなくて美咲が苦しんでいるのよ、って話。で、冒頭の台詞ですよ。もはやサイコパスでしょ。

浮気がらみシナリオによる鬱ゲーといえば、本作の他に有名な作品で「君が望む永遠」があります。あの主人公も、今カノと元カノの間で揺れ動く男ですが、正直、彼の場合は様々な特殊で困難な状況に振り回されている中、何が正解かもハッキリしないような、辛い選択を常に突きつけられる立場に晒されてます。そうなった原因が本人にあるわけでも無いのに。本人も、それはもう苦しんで苦しんで、文字通り断腸の思いで決断し、それでもみんながハッピーエンドとは行かなくて…。そのもがき苦しむ様は、シナリオを読んでいる方も居たたまれなくなるくらいです。

本来、恋人を裏切るというのはこのくらい重い行為であるはずなのに、この藤井冬弥の軽さといったらもうね…

このモノローグがある意味クズの真骨頂

ラストでは彰といわゆる「拳で語り合う」シーンがありますが、これだって全部彰のお膳立て。自分が裏切った相手に背中を押されるというあまりにも情けない有様。ほんと、なんなのこいつ。

自分が裏切った「親友」にここまで言わせてしまう冬弥という男は…

とまあ、とにもかくにも主人公への憤りが止まらない、そんなシナリオでした。

キャラクターとしては優しい先輩枠、でしょうかね。

ただ基本しっかり者で真面目ちゃんなんですが、何かと押しに弱いいわゆる「お人好し」で、貧乏くじを引きやすいタイプですね。個人的な感想を言えば、恋人よりは伴侶としてお勧めしたいタイプ。お互い支え合う穏やかで良い関係を築いていけるのは間違いない。

「WHITE ALBUM」のヒロインから一人交際相手を選べ、と言われたら昔と変わらずやっぱり彼女だなぁ、私は。

ただ、悪い男に掴まるととことんいいように扱われるタイプでもありそうですねぇ。ベクトルを間違えるとダメ男製造機になる素質も持ち合わせてそう。あ、だから冬弥がひっかかったのか…

それにしても、彼女の髪は刺さると凄く痛そうです…

篠塚弥生

ザ・「仕事のデキるオトナの女性」

とても「WHITE ALBUM」らしいシナリオと言えるかもしれません。

表向きは由綺のマネージャーとして、公私にわたる彼女のサポートを抜かりなく遂行する仕事人。冷徹、鉄面皮、機械的、そういった形容が似合う、感情の起伏とは無縁な印象の弥生。

そんな彼女は、過去の恋人との関係構築の失敗経験から、自分にどこか感情が欠落していることを自覚してしまい、結果、人を愛するということがどういうものかが解らなくなってしまってます。

そこに由綺が現れた。才能に溢れ、そこへ向かってひたむきに頑張る彼女に、自分に欠けている物を見た弥生は、由綺に恋愛的な愛情を抱いてしまう。彼女と在れば、欠けてしまった何かを取り戻せるのではという淡い期待とともに。

このあたりの秘密は、シナリオの最終盤で弥生自身が冬弥に告白するものです。

そんな弥生の冬弥に対する感情は複雑です。最初は由綺にとって必要な存在であることへの嫉妬。必要である故に、由綺の成功のためには冬弥を完全に排除することもできない。だから、理由をつけて由綺に近づきすぎないよう冬弥を牽制する。そのためには、欲求不満が由綺に向かないよう、自分の身体を差し出すことまでします。

しかし、そうしうたいびつな形でも冬弥と関わっていく内に、自分がいったいどちらに嫉妬しているのか解らなくなっていく。

鉄面皮が崩れた瞬間

「やはり…私が誰かを好きになってなどいけなかったのですね…」

感情の壊れた自分が誰かに好意を抱くことで、自分のみならず、その周囲の人間関係までかき回し、傷つけていく。自分は誰かを愛してはいけない。そんな弥生が自分へ感じる憤りややるせなさ、そんな葛藤がとても切ない。

全てにおいてそつなくスマートに立ち回る「冷徹な仕事人」も、愛情に関してはとても不器用。そんな弥生の哀しい葛藤は、結局最後まで解消することはないまま終わります。現実はフィクションみたいに、何かをきっかけに全てが綺麗に片付いたりはしないのです。いや、フィクションなんだけど、この弥生シナリオはフィクション的な安易なハッピーエンドを許しません。

由綺も冬弥も愛してしまった彼女にハッピーエンドはあり得ない。最後も、冬弥との「契約」を解消して、再び以前の日常に戻っていくのです。自分の想いを押し通すことは、他ならぬ由綺の幸せと未来を奪うことにしかならないのだから。

すべては、由綺のために。

うん、切ないね。とても切ない。

ある意味、冬弥よりもずっと由綺に対して純粋な想いをもっていると言えるでしょう。弥生は由綺の幸せと成功をなによりも願っている。そのために取る手段が少々ぶっとびすぎる嫌いはありますが、その思いだけは揺るぐことがありません。最後も、由綺のために、彼女や冬弥への想いを封印するのです。

恋人がいながら、会えない寂しさであっちフラフラこっちフラフラな冬弥とは覚悟のほどが違いすぎます。実際、冬弥は明らかに弥生に心引かれながら、由綺のために二人から身を引く弥生を前に、結局由綺の元へ戻っていくのです。

つくづくこの男、クズである。

キャラクター的配役としては、年上美女枠。クールビューティー属性。24歳なのでさすがに熟女とまでは言えませんが、6人のヒロインの中では一番成熟した肉体をお持ちです。ルックスも含めて私自身が好む属性とはかなり被っていますね。

が、私は「成熟美女」はストライクなのですけど、クール美女は敬遠しがちです。

主人公に好意を抱いている状態でも、鉄面皮を崩さず事務的な態度に徹する様は、ある意味「隠れツンデレ」ですかね。デレの部分を全く見せないという意味で。

多分、彼女は極度な客観視体質で、自分視点で物事を考えることができない人間だと思う。筆者自身もその傾向が多少ありますが、こういう人間は、他人はおろか自分自身すら客観視してしまうあまり、自分がどういう人間か分析はできても、自分自身がその時々に抱いている感情まで分析しようとしてしまい、素直に感情を消化できないんですよね。

例えば、自分が親になったとして、子供がかわいくて仕方がないとする。でもそれは、本当に純粋に子供をいつくしむ心なのか? 世間が求める理想的な親でありたいというエゴがもたらす欺瞞ではないのか? そんな考えなくてもいいところまで考えてしまい、自分の感情と率直に向き合えなくなって、苦しんだりするのです。

だから弥生は、自分の愛情を素直にぶつけることができない。あらゆる事に対して冷笑的な態度なのも、多分そのせい。素直な感情・感想に疑問を持ってしまうから、距離を置いて冷笑的にならざるを得ない。

弥生が実際にやってのけてきたことの是非はともかく、彼女の持つそういった自分への不信感みたいなものは、なんとなく共感できます。弥生は筆者と似ているところがあると思う。

でもこれ、気になったのは、エロが封印されているであろうリメイク版で、彼女のシナリオはどのように改変されたのか、ですね。彼女のシナリオは他と違い、エロ部分にそこそこ重要な意味があるシナリオであるような気がするのですけど。

次回予告

ということで、次回のターゲットはいよいよこの二人。真打ち登場といったところでしょうか。

緒方理奈
森川由綺

「WHITE ALBUM」編は一応次回で最終回の予定です。

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