見出し画像

私は勇敢な最中売りだ

勇敢なエピソードを4つ書くと書いてしまった手前、4つめ(いや、3つ目やけども)を何にするか悩んでいた矢先、恩人のさぼてん主婦さんがこんな記事を出されていました。

おー、これだ!!と思ったので、本日は、はじめてのアルバイトの話です。

***

人生初のアルバイトは、百貨店の九州物産展の販売だった。

臆病だったので、まず一度、短期のアルバイトで経験を積みたくて、短期のバイトを探して見つけた。

しかも、百貨店なら、教育面でもちゃんとしているだろうと踏んだ。

確かに教育はちゃんとしていた。
アルバイトの研修で、

「あなたは、お店で店員さんに、『あなたはアルバイトですか?それとも社員ですか?』と聞きますか?聞かないでしょう。
だから、皆さんは、他の社員と同様に立ち振る舞いをしなくてはならないのです」

そう説明された。
嗚呼、なんとまともな。

治安の悪い私の父は、しょっちゅう
「どうせこの店員はバイトなんだろ」
とか、
「あんた、バイトなんだろ、偉い人出せ」
とかいう人だったので、内心は『いや、聞くでしょ。』と思っていたが。

何はともあれ、1時間程度…だったかは定かではないが研修を終え、私は、聞いたことのない最中屋さんに配属された。
2人以上の配属をされるお店もあったが、私は1人だけで、何でアルバイトそのものが初めてなのに、1人で配属されるんだよ、と思いながら配属された。

最中屋の店主は、初対面の開口一番で、私のアルバイト歴を聞いて、初めてだと答えると、私に聞こえるように舌打ちをした。

うちはそんなに忙しくないからって新人をよこしやがって、と思っているのが、手にとるように伝わってきた。

初日はひたすら、「〇〇最中はいかがでしょうか」とか言ってただけだと思う。
その日、そのお店の最中を全種類買って帰って家族と食べた。
(バイトは帰省中に地元でしていたので、家族にも食べさせた)

衝撃的なおいしさだった。
人生の最中の中で一番美味しかったし、未だに一位は更新されていない。

そういえば、お店のこだわりの話もされたなぁと思いながら、説明書きを見て、最中の皮が米粉100%であることや、白餡は手芒豆を使っていることなどを頭に入れた。

次の日からは、売り方が変わったと思う。
営業だからではなく、本当に心底美味しいから、絶対に食べなきゃ損という想いで、知り合いにお薦めの最中をオススメする気持ちで売った。

ミルクボーイにですら、「モナカの口じゃない」とは言わせたくはない。
ギネス記録のモナカ2個食いも余裕。

皮も上顎にくっつかない。
米粉100%なので、小麦アレルギーのお子様の親子に売れたのはすごく嬉しかった。

「皮はパリッとして、餡子は大きな手芒豆を使っているので、ほっくりしてるんですよ。甘さは少し控えめで、とっても美味しいです。これまで食べたことのあるモナカの中で一番美味しいです!」

本当に美味しいので、心がこもった。
お客さんも、私が最中を食べるのを想像して、顔をくしゃっとさせるので、お客さんもだんだん興味を持ってくれた。
試食してみて美味しさに驚く顔が忘れられない。

通りもんを探す坊やも、懐かしい。

足がパンパンになり、休憩室の足マッサージ器も使わせてもらったけど、だんだんお店の人も心を開いてくれて、最終日近くに、次の物産展も私に手伝って欲しいと言ってくれた。

食い意地の張った私には、実は天職みたいなものだったかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?