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いつもポケットにキャプテンを


最近、いろいろあって、ちょっと自分に嫌気がさし始めていた僕は、そんな自分をなんとか奮い立たせるために、子供の頃、大好きだった野球アニメの名シーンを思い出していた。

主人公の男の子Tくんは中学の野球部のキャプテンで、引退を控えた彼には次期キャプテンを決める最後の大仕事が残っていた。

しかし、もともと優柔不断で、優しすぎる彼はなかなか決めることができない。

そんな風に、その日の夜も家の机の前で一人うんうんと唸っていた彼のもとに突然、ひとりの少年が訪ねてくる。

彼は部活の一年後輩で、次期キャプテンの第5候補くらいで名前を書いていたMくんだった。

来るなりMくんは、えらい剣幕で主人公を問い詰め始める。

「最近、神社で夜の特訓している姿を見かけないんですけど、どうしたんすか?もうキャプテン辞めるから、練習しても仕方ないとか思ってるんすか?俺はキャプテンを見損ないましたよ!」

気まずそうに黙り込む主人公の背後から、彼のお父さん(ずっと彼と二人三脚で神社の猛特訓をしていた当事者)が助け舟を出す。

「こいつはよぉ、もう野球やりたくてもできねえ体になっちまったんだよ…。」

「えっ!?」と驚きの表情を浮かべるMくん。

そうなのだ。

あの宿敵A学園との激戦で、指が骨折したのをかばいながらずっとプレイし続けたせいで、彼の人指し指は折れ曲がってしまって、もはやまともにボールすら握れないような状態になってしまっていたのだった。

思わず、うう、と泣き出す主人公。

それに釣られて泣きそうになるのをグッとこらえて、Mくんはこんな風に主人公を叱咤激励する。

「何度も僕らが諦めそうになったときにも、キャプテンだけは絶対に諦めずに、必ず陰の努力で乗り越えて僕らを勇気づけてくれたじゃないですか。右手が使えないくらいなんですか。だったら左手で投げりゃあいいじゃないですか!」

その一言にハッとした主人公は、Mくんと一緒に、あの神社の境内に行くことを決意する。

そして、そこでMくんを座らせて、彼のグローブめがけて左手でボールを思い切り投げ込んだ。

しかし、ボールはMくんのグローブに届くずっと手前で力なく落ちて、地面の上をコロコロと転がるだけだった。

そのボールの軌跡を目で追いながら、今度はたまらずMくんが涙ぐんでしまう。

しかし、そのMくんの肩にガッチリと手を置きながら主人公のTくんはこう力強く語りかけるのだった。

「M、次期キャプテンよろしく頼むな!」

突然かつ予想外の展開に、えっ〜!と驚きの表情を隠せないMくんに向かって彼はこう続けた。

「諦めかけていた僕のやる気を引き出したそのガッツで、チームを引っ張ってくれ。頼んだぞ!」

…号泣(笑)。

そして、このMくんが全然名キャプテンにならなくて、どちらかというと迷キャプテンだったのもなんかいい感じなんだよなあ。

これが今から40年近く前、僕が小学4年の頃に夢中になったアニメだ。

そして、それ以来、この初代キャプテンのTくんはずっと僕の憧れの人だった。

しかし、最近の僕は、そんな彼とはほど遠い人間に成り下がっていたような気がする。

だから、改めて大好きだったあの主題歌を聞いて、初心を思い出すことにしよう。

答えよりもっと大事なことは勇気出して自分を試すことさ

君は何かができる

誰も何かができる

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