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恋人も濡れる街角

今日は妻が職場の送別会に参加するので、息子のお弁当を買って早めに帰るように言われていたのにも関わらず、それをすっかり忘れて呑気に19時過ぎに帰宅してしまった僕。

でも、そんなダメおじや、いやダメオヤジを全く咎めることなく、でも、ちゃんとお腹空いた〜と素直に言ってくれる息子がやっぱり可愛くて、お詫びを兼ねて最近、彼がお気に入りの駅前の町中華に連れて行くことにしたのだった。

しかし、行きはまだ雨が小降りだったのでよかったのだけど、夕飯を食べ終えた20時過ぎには、雨足が強くなり、気温もぐっと冷え込んでいた。

すると、慌てて家を出たせいでちょっと薄着の息子が急に寒がり出したので、何とか彼の気を紛らわそうとスタエフのライブ配信を久しぶりに始めてみることにした。

でも、みんなちょうど家族で夕飯食べてたり、リビングでくつろいでいる時間帯ということもあって、なかなかリスナーが現れなかった。

たまに誰か来てもすぐにいなくなって、

そんなことを何回も繰り返して、その度に息子と二人で一喜一憂しているシチュエーションがだんだんおかしくなってきて、気づいたら、その無観客試合を二人きりでめちゃくちゃ楽しんでいた。

しとしとと降る雨のカーテン越しに

街灯や車のヘッドライトの輪郭のぼやけた光の水玉が

ゆらゆらとゆらめく

そんなちょっと幻想的な世界に

僕と息子の二人だけしかいない

その時は確かにそんな気持ちになって、

そして、

それがなんだかやけに嬉しくなった僕は

きっとこの時間を僕たちに味わって欲しくて

みんなわざと僕らの配信をスルーしてくれたんだ

なんて

いつしかそんなお人好しにもほどがある感想を抱いていたくらい

我ながら柄にもなく自然と人に優しい気持ちになっていたのだった。

そう言えばもうずいぶん昔に、これとよく似た気持ちになったことを思い出した。

ああそうか

やはりというべきか

僕は彼にずっと恋しているんだよなあ。


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