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たいしたこと、だった

ずっとこんなのたいしたことないって思っていた。

そう、どこにでもあるよくある話だよな、ってね。

でも、実はこの5年間、僕は

たいした努力を重ね続けて、

その甲斐あって、

ちゃんと

たいしたことを成し遂げていたのだった。

その事実を思い出せたのは、

そんな不感症な僕の代わりに、

たくさん悔しがって、

たくさんもったいながって、

たくさん怒ってくれて、

たくさん泣いてくれた

かつての仕事のパートナーのおかげだった。

まあ、おかげなんて言っているけど、最初は困惑しかなかった。

せっかく自分の心の安定を保つために、ずっと必死に忘れようとしていたのに、ってね。

でも、本当は、なかったことにしちゃダメだったよな、とすぐに改心した。

それは彼女をはじめとするこの仕事に真剣に関わってくれた人たちに対して失礼だし、そして何よりも

こんなにも歯を食いしばって必死に頑張ってきた

自分自身に対して

無礼千万な振る舞いだと思ったからだ。

そう、たとえ他人にどう思われようが、それだけは

あの苦しくも楽しかったあの日々のことだけは

絶対に忘れちゃいけなかったんだよなあ。

気づいたら、僕は久しぶりにあの相棒の起動ボタンを押していた。

そして、その瞬間

まるで小さな筏で大海原に放り出されたような、

清々しくてドキドキワクワクだらけの孤独感

で心が満たされていくのが分かった。

そう、まさにあの頃の僕のようにね。

そして、全くの奇遇だけど、

その日の夜、僕がとても信頼を寄せている友人からも

「あの頃の兄さん、輝いてましたよ!」

と言われたのだった。

このとき、ぽっちゃり眼鏡でひげをたくわえたあの神様からの

「あきらめたら、そこで人生終了ですよ」

という声が確かに僕には聞こえたような気がしたのだった。

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