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クララが立った、トイレが詰まった

タイトルが何だか意味深だけど、特に深い意味はない(強いて言うならば、表紙のイラストを使う理由が欲しかったということになるかな)。

というわけで、単なるトイレづまりのお話のはじまり、はじまり・・・。

朝起きると、トイレが詰まっていた。

いや、実際には僕が確認したわけではなく、妻からそう告げられたのだった。

しかし早速、僕が現場を見に行こうとしたら、きっぱりと制止された。

「自分がしたあとなので、見ないで欲しい。自分で何とかするから。」

そういうことなら、ひとまず彼女に全権委任することにしよう。

まぁ「トイレがつまった」といっても、せいぜいトイレットペーパーのつまりだろうから(実際、過去にも息子が紙を使い過ぎて詰まらせたことがあったし)、30分ほどでトイレの水位も低下していたこともあり、「時間が経てばきっと解決するだろう」と僕もあまり心配せずに家を出た。

しかし、その約10時間後に仕事を終えて帰宅すると、妻がうろたえながら、ちょうどあの水道業界のクララこと「暮らし安心クラシ〇ン」に電話をしようとしているところだった。どうやら、その後もつまりは一向に収まらず、いよいよ万事休すと彼女は判断したようだった。

しかし、以前、腕利き水道屋さん兼爆笑&感動エッセイスト兼天才画家であるK氏から「ネットで広告を出している水道屋さんのほとんどはぼったくり業者ですよ」という貴重な裏話を聞いていた僕は、すかさずロン毛のカツラを装着してから、そんな狼狽する老婆、いや妻に向かって、

「ちょ、待てよ!」

と一言、声をかけたのだった。そして、突然のキムタク登場に我に返った妻に向かって僕は畳みかけるようにこう続けた。

「noteで知り合った水道屋の社長さんから、この業界にはぼったくりする業者がはびこっているって話を聞いたことがあるから、プロに頼むのは本当に最終の最終手段にしよう。」

「とりあえず僕が今からホームセンターでトイレのすっぽん(正式名称はラバーカップというらしい)を買ってきて、すっぽんすっぽんしてみるよ。」

というわけで、帰宅早々、自転車を漕いでホームセンターまですっぽんを買いに行った僕が、それを使って(YouTubeの使い方動画を参考にしながら)トイレをすっぽんすっぽんしていたら、あっという間に、詰まりは抜けて、トイレの水が引いていった。

これにて一件落着~!

という本当に記事にするまでもないような他愛のない話なのだけど、実は「つまり」の問題が解決するまで、ずっとこれをK氏に頼んだらどうなるだろう、という妄想を膨らませて、勝手にニヤニヤしていた、ということが実は言いたかったのだ。

もちろん一流の技術者のK氏に単なるトイレづまりの仕事を頼むなんてありえない話ではあるけど(そもそも連絡先も知らないし)、例えば、昼間、僕が仕事で不在中に、K氏がウチに訪れて息子と交流しているシーンを想像するだけで、まるで映画のワンシーンを見ているような感動を覚えてしまう。

幼くして世界や人間に絶望した少年は正真正銘のヒーローと出会い、自分もまた彼のようなヒーローになりたいと固く心に誓ったのだった

みたいな、ね。

一方で、いろんなところでNOTERさん同士の交流が行われていてそれを微笑ましく見ている僕だけど、NOTERというよりJOKERなK氏と僕の二人はおそらく意図的に会うことはしないだろうとも考えている。

でも、なんとくなく彼とは偶然、街でひょっこり出会うような気もしているんだよね。

それはもしかしたら風俗店の待合室のようなバツの悪い場所かもしれない。いや、むしろその方が僕らにとってはお似合いのシチュエーションのような気もする。

昼なのに薄暗く湿ったその場所で、彼はいつもの調子で(あのイケボで)、

「寝た子さん、最近、調子はどうですか?」

と尋ねてきて、僕はそれに対して、

「いやあ、まあ相変わらずどうにもならんけど、いつもの調子でやっとりますわあ。」

と答える。

その後、「〇〇ちゃん、ご氏名の方、ご準備が出来ました~。」と黒服のコールが入る。

「ああ僕だわ、じゃあお先に・・。」と言いながら僕が席を立つ。

その僕に向かって「健闘を祈ります」と返すK氏(相変わらずダンディな声だな)

そんなやり取りの様子まで、まざまざとリアルに思い浮かべることが出来る(笑)

でも、正直、このまま一生会わない方がやっぱりカッコいいよな、とも思っている。

だって、もう会わなくても彼はいつも僕の心の中にいるからだ。

そう、心の中で彼がこの星のどこかで今も相変わらず悪戦苦闘している姿をずっと感じられるからこそ、こんな間抜けな僕でもまだくじけずに頑張っていけるんだよな。





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