灰色の空と白いステッキと水色アンブレラ
月曜日の朝
駅前の見慣れた灰色の街は、小雨まじりの曇り空と色合いが見事に調和していて、とてもシックで美しかった。
東京には雨が似合う
改めてそう思った。
お昼休み
外で軽くランチを済ませた僕は、相変わらずの雨模様の街を傘をさして歩いていた。
すると、ある人の姿が不意に視界に入って、思わずハッとしてしまった。
彼は、水色の小さな折り畳み傘を右手に、そして、白い杖を左手に持って、こちらに向かって歩いているところだった。
この近くには視覚障害の人たちが通う学校があるから、きっと彼はそこの学生さんなのだろう。
しかし、よく見ると、強い風に煽られて水色の傘の端が折れ曲がって上を向いていて、ただでさえ小さい折り畳み傘がさらに小さくなっていた。彼もそのことにどうやら気づいていたようだけど、一人ではどうしようもなく戸惑っている様子だった。
だから、僕は慌ててそんな彼の元に駆け寄り、その傘を元の状態に直したのだった。
「ありがとうございます。」
彼はとても丁寧に挨拶をしてくれた。
しかし、そんな彼に対して
「いいえ、こちらこそ。」
なんて僕が思わず返してしまったものだから、もしかしたら彼をまた無駄に困惑させてしまったかもしれない。
実は、僕が灰色の街に突如、現れた鮮やかな水色のアンブレラと白いステッキを持った彼の姿に思わず見惚れてしまっていた、なんて彼は知る由もないだろうから。
しかし、たとえ天気予報が外れて雨が雪に変わらなかったとしても、雨の街には、時折こんな素敵な魔法が降ってくるから、僕はむしろ雪よりも雨の東京の方が好きかもしれない。
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