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北春風に吹かれて

今年の春風はどうやら北から吹いているらしく、今朝も会社に向かう僕の頬を冷たく震わせる。

人間の気持ちなんてその日の体調次第でハイにもローにもなる極めていい加減なもので、だから、まだ水曜日だっていうのに疲労が蓄積した僕の口をついて出る言葉はどれも我ながらうんざりしてしまうものばかりだった。

でも、季節外れのこの冷たい春風だけは、そんなどうしようもない僕の味方をしてくれているような気がして、そう思えた瞬間、お腹の奥の方でポッと小さな灯りが灯った。

そして、その灯りはじんわりと冷え切った僕の心と体を温めて、きっと会社に着く頃には、電子レンジでチンしたくらいのあったかさを取り戻す予感しかしなくなった。

確かに

「そこに愛があるんか?」

と大地真央に詰め寄られた時に、いったいどれだけの人が「ありまっせ!」と答えられるか分からないそんな世界に僕らは生きていて、それでもまだ諦めきれないほど間抜けな僕たちは、今日もまた灰色の満員電車に揺られて、それぞれの戦場に向かっている。

それを絶望への道のりにするのも希望への道のりにするのも、結局、自分次第なのだろう。

そんな僕たちを乗せて、北から吹く春風は走り続ける。

美しい桜の花びらたちを吹き飛ばしながら。

「満開の桜の下には、死体が埋まっている。」

さすがに、このときばかりは、

このトンデモ仮説を

思わず信じてしまいそうになっていた。

「次は乃木坂で〜す」

や、やべえ、このnote書くのに夢中になってて、電車乗り換えるの忘れてたわ。




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