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希望のかけらを売るお店

その街は80年代、90年代には、おしゃれタウンとしてその名を(特に若い女性を中心に)全国にとどろかせていたけれど、今の若者たちにとってのイメージは正直、どうなのか分からない。

けれど、なんとなくおしゃれタウンとしての存在感は以前に比べると薄れているような気もしている。

実際、若かりし頃、その街に住んでいたオシャレでトレンディな親戚のお姉さんは、今では二子玉川(通称ニコタマ)のタワマンに住んでいるし・・・。

まあ、正直、おしゃれでもなんでもない僕には、そんな街の栄枯盛衰の物語は割とどうでもよくて、代わりに僕にとってのこの街は、ただただ、

ずっと通い続けたいお店がある

というだけの街である。

ちなみに、そのお店は、駅の南口を出て、右に曲がって、ゆるやかな坂道を登って、たぶん3つ目くらいの交差点を左に曲がった道を少し進んだ右側にある(こいつ、まったく説明する気がないな(笑))。

半地下にあり、看板も白を基調にした上品だけれど地味なものなので、もしかすると歩いていても見過ごしてしまっている人も多いかもしれない。

ちなみに、かつてその店の看板は、もう少し縦長で大ぶりだった。

いや、正確に言うと、今、入っているお店の前の店の看板がそうだった。

そして、そのやや大きめの白い看板のお店は、‘90~’00年代の雑貨好きの若者にとっては、ちょっとした聖地みたいな場所だった。

店内にはヨーロッパのものを中心としたカワイイ筆記用具(ステーショナリー)やヴィンテージの絵ハガキやポスターや雑貨たちがなんとも絶妙なバランスでにぎやかにひしめき合っていて、僕自身、店に入るたびに、そのカラフルでハイセンスな空間に何度も胸をときめかせたものだ。本当に東京中、探してもこんな素敵な店はないとずっと思っていたし・・・。

もちろん戦利品もたくさんゲットした。そして、その中でも僕が個人的に一番思い入れがあるのは、当時付き合っていた彼女にプレゼントした

よつ葉のクローバーの上に小さなてんとう虫がちょこんと乗っているガラスと金属製のブローチ

だ。

そういえば、彼女はそれを自分のお気に入りのモスグリーンのコートの丸襟にずっと着けくれていたなぁ・・・(遠い目)

そんな素敵な思い出が詰まっている場所でもあったから、今から3年ほど前にそのお店が閉店するという話を聞いて、僕はとてもショックを受けた。心にぽっかり大きな穴が開くとはこういうことなのかと思うくらい、とてもさみしい気持ちにもなった。

でも、ほどなくして、その跡地に入ったお店が、趣は全く異なるけれど、そのお店に負けず劣らず、とても素敵なお店だったから、今ではまったくさみしさを感じることはなくなった(我ながら、薄情なヤツだね(苦笑))。

そして、

ここから、またボクと雑貨の新しい物語が始まるんだ

というとても希望に満ちた明るい気持ちになっている。

というか、実は、もうすでにその物語は始まっていて、実際、そのいくつかについては、このnoteでも(旧アカウント時代に)何度か披露したことがある。

そのお店の名前は、FREEPARKという。

店長のさっちさんは、noteでも情報発信をしている方なので、きっとご存じの方もいるかもしれない。

僕自身、noteの記事の中でときおり語られる、お店で取り扱っている品物、そして、物作りにたずさわる人たちへのさっち店長の熱くて真摯な想いに何度、感動で心を震わせたか分からない。

しかし、そんな熱量高めの記事とは裏腹に、実際のFREEPARKの店内は、とてもシックで静かで洗練されているのが面白い。

本当にとてもクールでカッコいい空間なのだ!

けれど、そんな店内で、とても凛として静かな佇まいで鎮座まします品物たちからは、ただ遠くから見つめているだけでも、ちゃんとあの熱を帯びている感じが伝わってくる。そして、手に触れたとたん、どっと物語があふれ出してくるようなそんな迫力を覚える。これは決して誇張された表現ではないことを、ぜひ一度、店頭に行って、みんなにも感じてもらいたい。

そんなFREEPARKが、つい先日、開業15周年を迎えた(ちなみに今の店舗では3年目になるのかな)。

そして、店長のさっちさんは、きっと、大げさだよ、って苦笑いするかもしれないけれど、僕はその事実を

控えめに言っても、ちょっとした奇跡だな

と思っている。

というのも、長年、某消費財メーカーに勤めている僕は、現代日本において、魂がこもったモノを作り、それを売り続けることがどんなに困難なことかということを本当に身に染みて痛感しているからだ。

だから、僕は、そんな希望に満ちたFREEPARKの奇跡の物語の断片(カケラ)を、こうやって自宅に持ち帰り自分の日常に加えられることが、たまらなく嬉しいし、とても贅沢なことだと思っている。

そして、これを読んでくれたあなたにも、ぜひその喜びを感じて欲しいな、と余計なお世話だけれど、心の底から願っている。

※表紙の写真はFREEPARKのホームページからお借りしました。ありがとうございました。



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