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子ども時代の思い出〜病気の時には〜

前回の記事を書き、子ども時代のことを思い出した。昭和のバタバタがたくさんあって、面白い時代だったなぁと思ったので、全て忘れてしまう前に書きとめておこうと思う。


今回は病気の時の思い出だ。

子どもの時、熱を出すとその時だけもらえるものがあった。黄桃やみかんの缶詰だ。缶詰は貴重品でどこからかのいただき物だと思うが、熱があったり、喉が腫れたりして他のものを食べられない時に、母が食べさせてくれた。
ガラスの器に入れられて、匙が添えられて運ばれてくる。布団の上に正座して食べたものだ。いつもは4人兄弟でみんなひとまとめで扱われていたが、病気の時は、なんだか特別に大切にされてる気がして嬉しかった。

ある日また熱を出したのだろうか。病院に向かうことになった。だがその頃の我が家には車がなかった。私は丹前でぐるぐる巻にされて、父の背中に括りつけられ、父のバイクに乗って病院へと向かった。
10分もしないで着く病院だ。でも、私はその途中に父の背中に嘔吐した。突然生温かいものをかけられた父はどんな気持ちだっただろう。叱られる、と思ったが、父は何も言わなかった。診察が終わって、また父の背中に括りつけられて、家まで帰ってきた。
嘔吐したことには、家でも何も言われなかった。きっと自分なら「ヤダ〜」とか絶対言ってると思うが、父は何も言わなかった。黙って汚れた丹前や自分の外套を洗っていた。なんという父だろう。
自分が大人になって振り返ると、その時には気づかなかった親の姿に教えられることがある。

風邪やら腹痛やらで学校を休む時には、家にあった『少年少女世界文学全集』の中から一冊を取って布団に潜り込んだ。共稼ぎだったので、たった一人で寝ていることも多かった。でも本があれば楽しかった。

小公女
小公子
若草物語
アルプスの少女ハイジ
15少年漂流記
子どもだけの町
あしながおじさん
にんじん
ガリバー旅行記
アンクル・トムの小屋
ロビンソンクルーソー
など、全24巻くらいで一冊に2つの物語が収められていた。
題名だけで今日はどれを読もうかな、と決めた。まるでルーレットだ。
たとえば、『にんじん』という題名で、まさか髪の毛が赤い少年の話と想像できる子どもはそういないだろう。内容が面白いか、自分の好みに合うかは読んでみないと分からなかった。途中でつまらなくて寝てしまったのも少なくない。
だが、面白かったのもある。『子どもだけの町』『若草物語』『15少年漂流記』これは面白かった。

図書館で、文学全集はあまり人気がない。本棚の下段で色褪せてしまっている。きっと私のようにどんな話か分からないからだ。表紙に紹介文があったら手に取るお子さんも増えるかもしれない。

子どもの頃の病気の思い出。
振り返ると、あまり痛くて辛かったことなどは覚えていない。病気の周りの日常が懐かしく思い出されるだけだ。


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