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【育成年代に真似して欲しいNBAプレーヤー】  ーT.J. マコネル(Indiana Pacers)ー

まえがき

NBAの’20-'21レギュラーシーズンが終了しました。最終戦のトロント・ラプターズ戦に勝利し、イースタンカンファレンス9位でプレイイン・トーナメント出場を決めたインディアナ・ペイサーズで、ベンチ出場ながらキャリアハイタイとなる17アシストをマークした選手がいます。T.J. マコネルです。

アリゾナ大出身の彼は2015年にドラフト外でフィラデルフィア・76ersに入団した苦労人。2年目のシーズンには出場81試合中51試合に先発出場し、6.9得点6.6アシストの成績を残しました。2019年オフにペイサーズと契約、貴重なベンチプレーヤーとして活躍しています。

今シーズンの活躍

出場69試合中 先発出場3試合
1試合平均 26.0分出場
1試合平均 8.6得点 ※キャリアハイ
1試合平均 6.6アシスト(リーグ14位)※キャリアハイ
1試合平均 1.9スティール(リーグ2位)※キャリアハイ
総スティール数 128(リーグ1位)

今シーズンの活躍は特に素晴らしかったです。オラディポ、ルバート、ブログドンらアウトサイド陣が怪我で欠場が多かった中、ベンチから攻守を支えました。個人的には6thマンアワードを獲得してもおかしくない成績だと思っています。

そんな彼、身長は188cmとNBAのPGの中では低い方といえます。そんな彼がチームの司令塔としてオフェンス面で、またスティール数リーグNo.1を記録するなどディフェンス面で活躍できる要因はどこにあるのかを探っていきたいと思います。

T.J. マコネルのすごさ

上の動画は、昨シーズンの彼のハイライト動画です。この動画を見ると、彼のプレーヤーとしての凄さが伝わってくると思いますが、結論から言うと、彼の凄さは以下の3点にまとめることができます。

①視野の広さ
②パスの多彩さ
③ハードワーク

視野の広さ

まず彼のアシスト数に着目してください。彼は1試合平均26.0分の出場ながら、平均アシスト数6.6はリーグ14位。Assists per minute(出場1分あたりのアシスト数)では0.26※1で堂々の6位です。選手のプレーの安定度を示すAssist to Turnover Ratio(アシスト/ターンオーバー比)も3.4※2でリーグ15位です。NBA屈指の司令塔ということができます。

※1 https://www.teamrankings.com/nba/player-stat/assists?rate=per-minute

※2 https://www.teamrankings.com/nba/player-stat/assist-to-turnover-ratio

このアシスト数はどこからくるのでしょう。キャリアハイタイの17アシストを今シーズン最終戦の動画を見てください。

このハイライト動画の中で、マコネルが起点となるファストブレイクが何本か出てきますが、リバウンドからのアウトレットをレシーブした後、ルーズボールを取った後など、ボールをレシーブした瞬間に彼はコートの一番奥にいるプレーヤーまでを視野に入れていることがわかります。

動画中0:09からのブレイクでは、ボールをキャリーし始めた時には自分より後ろにいた逆サイドを走るブリセット(12番のプレーヤー)を視野の中に入れながら、キャリーし続け、最後に長い距離のバウンズパスを一気に射抜きます。

こちらは今シーズン15アシストをマークしたヒート戦ですが、ファストブレークでのボールキャリー中、ハーフコートオフェンスでボールをハンドルしている最中、そしてオフボールの時も常に顔が上がり、コートの端から端までを視野に入れ、ノーマークのプレーヤーを探しています。ノーマークのプレーヤーはいなければ=自分がオープンなのですかさずフィニッシュに持っていきます。

こちらはマコネルのキャリアの中でのインバウンズスティールばかりを集めたハイライト動画です。ディフェンスでもしっかりと視野をとり、自分のマークマンだけでなくボールの出所をしっかりと見ています。もちろんポジショニングや予測の力も素晴らしいのですが、それもしっかりと”視野を取れている”からです。

あるコーチに教えていただいた、バスケットボールの視野の取り方の原則である

1(自分)+ 9(自分以外のプレーヤー)+ B(ボール)+ G(ゴール)

をまさにオフェンスにおいてもディフェンスにおいても体現しているプレーヤーだと言えます。

パスの多彩さ

彼のパスは本当に多彩。まずはパスの出し方。チェストパス、ワンハンドプッシュ、フックパス、ラテラルパス、ポケットパス、オーバーヘッドパス、背中方向へのパスなど、ありとあらゆるパススキルを身につけている。ボールを両手で扱う場面と片手で扱う場面もしっかり使い分けている。

次は軌道。ロブパス、ライナー、バウンズをディフェンスのポジショニングや手の位置をしっかり見て使い分けている。これもあるコーチから教えていただいたことだが、8つのパッシングウィンドウ(DFの頭の上、両耳の側、両脇の下、両踵の側、股下)をしっかり見て出せている。

さらにタイミング。ピックアンドロールやドライブの後、いわゆるエリア2(ペリメーター)でヘルプディフェンスとの駆け引きをしっかりしている。パスフェイクやステップを巧みに用いながら、ディフェンスが自分に寄るカウンターのタイミングでパス(もちろん自分に寄らなければフィニッシュ)できている。

パスの多彩さ = パスの出し方(パススキル) × 軌道 × タイミング

と定義できるかもしれない。

ハードワーク

そしてなんと言っても彼の一番の持ち味は”ハードワーク”です。

ルーズボールを必死に追う姿勢、相手のブレークに対して諦めずにバックする姿勢、こういったハードワークはチームに活気を与えます。もちろん彼の視野の取り方やディフェンスのスキルも一流のレベルですが、ハードワークの姿勢が無ければ、スティール数リーグ1位もなかったと思います。

NBAの中ではサイズは小さい方ですが、大きなハートでハードワークする姿勢が彼を貴重なベンチプレーヤーたらしめているのではないでしょうか。

まとめ

T.J. マコネルは決してサイズやスピード、クイックネスに恵まれたプレーヤーではありませが、ペイサーズの貴重なベンチプレーヤーとしての地位を確固たるものにしています。彼の選手としての特徴として、①視野の広さ ②パスの多彩さ ③ハードワークをあげました。この3つのスキルやマインドは

①育成年代でしっかりと身につけられる
②その後の選手としての成長のためのベースになる
③能力やサイズを補う引き出しになる

と考えます。ゆえに、育成年代の選手にはT.J. マコネルのような選手をお手本にして欲しいと思います。

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