上場企業の不正会計について

 内部統制報告書制度が見直されるそうだ。内部統制報告書とは、主に上場企業に義務付けられており、「財務報告に係る内部統制の基本的枠組み、内部統制の評価の範囲・基準日・評価手続・評価結果等を記載して、内閣総理大臣に提出する」というものだ。

 記事にもあるように、カネボウや西武鉄道の財務諸表の虚偽記載が問題となった。こうした不正会計を未然に防ぐ狙いで、2008年に導入されたのは内部統制報告書である。導入された翌年2009年には若干の減少がみられたものの、2019年までは基本的に右肩上がりになっている。まさに本末転倒の事態となっている。

出所:東京商工リサーチ
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20220427_02.html

 直近で思い出されるのは、マニュアル作成サービス大手のグレイステクノロジー社だ。21年3月期の売上高18憶円の内、9億9000万円が架空計上であったことが判明した。その後、四半期報告書の提出が期限までに提出できなくなり上場廃止となった。

 コーポレートガバナンス改革と称して内部統制報告書制度を導入し、社外取締役も義務化した。それでもなお不正が減らないのは何故だろうか。

 東京商工リサーチによると、以下のように分析されている。「企業のグローバル化に伴い、海外子会社との取引に関する不適切会計も増加し、国内子会社での不適切会計も相次いだ。また、現場や状況を無視した売上目標の達成へのプレッシャーで、不正会計に走るケースが依然として多い。」

 上場企業の不正会計に関する実証研究は多く存在しており、回帰分析を用いた定量的なアプローチをとるものもある。持ち株比率によって不正会計の抑止力に影響するような研究も存在する。

 いずれにしても、上場企業のコーポレートガバナンスコードは株主を頂点としたその他のステークスホルダーという構図になっている。まさに株主資本主義である。従業員や取引関係者の厚生はよりも、株価の上昇と高配当が優先されるのだ。ストックオプション制度は経営者に株主優先経営のインセンティブを与える。

 詳細な分析はできないが、株主資本主義という利益至上主義が不正会計の温床になっている可能性は高いと思う。


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