強兵なき富国はユートピアニズムである

 2023年度一般会計総額の内訳において、防衛費関連費は昨年比で26%増え、約6兆8千億円となった。これを受けて、リベラル派の言論人の多くが、軍国主義国家の再来であるかのような非難を展開した。また防衛予算の増加を非難する材料として、台湾有事やその他武力衝突の可能性が低いことも挙げているようだ。だが、果たして、そうした有事の可能性は、本当に低いのだろうか。下記に掲載した図は、三菱総合研究所のレポートから抜粋したものである。

出所:三菱総合研究所「外交・安全保障 第9回:日本は「戦後最も厳しく複雑な」環境に直面」


出所:三菱総合研究所「外交・安全保障 第9回:日本は「戦後最も厳しく複雑な」環境に直面」


出所:三菱総合研究所「外交・安全保障 第9回:日本は「戦後最も厳しく複雑な」環境に直面」

  図1では、軍事予算の伸び率を中国と日本との対比で表しているが、いうまでもなく歴然とした差である。また、図2においても、自衛隊によるスクランブル発信は、2003年頃から急伸しており、その大半が中国によるものだ。仮に有事が起こるとすれば、E・H・カーやジョン・ミアシャイマーが言うように、パワーバランスが著しく隔たった時であろう。

 私は断じて自民党支持者ではないが、日本国内においては、この程度の防衛予算の増加で、多くの言論人が発狂するくらいであるからあきれたものである。強兵なき富国の追求なぞ、ユートピアニズムの極致である。日本は色々な意味で、手遅れなのであろう。

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