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【覚え書き】2024SS(Tokyo)9/1/2023 


Support surfaceのコレクション会場には中央にピアノが置かれていた。


どこからか人の話し声や微かな旋律を持った音楽のような音が聞こえてくる。部屋の外から聞こえてくる環境音なのか、意図的にスピーカーから流されている音なのか、そのちょうど中間にあるような音だった。


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デザイナー砂壁は「無いものを作る」というある種の強迫観念を自身に課してきたと語る。同時に、「無いもの、なかったものと感じる域がどんどん狭くな」るという不安を吐露している。


しかしながら、新しい服の形を提示し続ける難しさを砂壁個人の問題として片付けることはできないだろう。



今季のコレクション発表会場では、その多くで「もはや服には新しい形などないのだ」という諦めの空気がなんとなく共有されていたような気がした(今季に限ったことでは無いのかもしれない)。



ものの形が更新されなくなった時、それをファッションという新陳代謝が強いられる構造の中でどのように「新しく」、つまりそれが新しいものであるかのように見せていくのか、それが少なくとも現在の東京コレクションという「ゲーム」の明文化されない攻略法であるように思える。



それは今までコーディネート、諸々の演出やライティング、会場選び、音楽、言葉による捕捉など様々な方法で試みられてきた。


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中央のピアノの音が部屋に響いてショーが始まった。


砂壁はものの形の静かな新しさを、柔らかに会場にいた人たちと共有していた。











2023.09.02 2:14




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