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あの頃を思い出して抹茶を点ててみる

小学校4年生から15年ほど、祖母と一緒に茶道のお稽古に通っていた。最後は学業やアルバイト、就職やらで足が遠のいてしまったが。

最近雨で憂鬱かつ冷たい飲み物でお腹の冷えを感じていたので、抹茶を点ててみようと思い立った。
久しぶりの抹茶は温かくてほっとした。

ならばと。
10年以上前の古い記憶をたどって、キッチンに立ってお点前の所作をやってみることにした。

初日は薬缶からお湯を注ぐこと。重みのある鉄瓶から静かに注いだのを思い出しながら。薄茶の深く細かい泡の層を作ることに集中した。

翌日は袱紗さばき。袱紗なんてもっていないからそのへんの布巾で代用。ブランクがあってもやり方は身体が覚えていた。ついでに抹茶の缶を棗のつもりで拭いてみたり。

今日は盆点のつもりでお盆も用意して。茶巾にできるのはないなーと思いながら、覚えている範囲で流れに沿ってやってみた。

茶道を習っていた頃を思い出した。
緊張感があってお点前に集中するあの時間が好きだった。
釜がしゅんしゅん音をたてていたり。炉、風炉がパチパチ鳴っていたり。お湯の柔らかい音と水の硬い音の違いに気づいたり。柄杓を取り扱う時のきれいに見える手捌きにこだわっていたり。夏は紫陽花の葉を水差しの蓋代わりに使って素敵だなと思ったり。濃茶を初めて飲んだ時の衝撃。色々なお点前があってそれぞれ決まった手順があって、無意識にやっていたら次が何だったか忘れたとか。いらいらしている時は扱いが雑になっていて、案の定先生に指摘されたり。
1番はお抹茶をいだだいた時の美味しさと(もちろんお菓子も)、一緒にお稽古していた祖母と同年代のおじさまおばさま、先生との他愛のない会話と時々深い話しだろうか。内容は覚えていないが。

あの時のおじさまおばさまはとうの昔に他界されてしまった。先生はおいくつだろうか。まだお元気にされているだろうかと物思いに耽る。

これからも時々抹茶を点てていただこう。
私の古い大事な記憶。

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