<智花の場合 第2話>
<第2話>
「えっと・・・そのワンピースがどうしたんですか?」
智花は尋ねる。
「覚えてないの?まあ無理もないか。そういうところ鈍いもんね。覚えてないなら教えてあげる。この前駐車場であなたにぶつかられて汚れたのがこれ。」
記憶が蘇る。誰かとぶつかったことは覚えていたが、まさか相手が美桜だったとは予想だにしていなかった。
「本当にすいませんでした。クリーニング代はお支払いします。」
「クリーニング代?その程度で許せって言うわけ?このワンピース、同伴に誘ってきたお客がくれたものでね、これを着ていけば気分よくお金を使ってくれるはずだったのにあなたのせいでパーになったの。それどころか、太客だったのにそのあと音沙汰なし。はっきりいって大損害なんだよね。」
「どうしたら許してもらえますか?お金ならなんとかしますから」
「あなたの払える程度のお金、もらったってなんとも思わない。私はあなたのおかげで恥をかいたんだから、あなたにも十分恥ずかしい思いをしてもらいましょ。」
「美桜さんの言ってることが分かりません。いったい私に何をさせたいんですか?」
美桜の要求が分からず、智花もだんだん声のボリュームが上がってくる。
「とりあえず・・・そこで裸になってもらえる?」 美桜は冷たく言い放った。
「裸ですか?そんなのできません。いくら大切な洋服でも、これはさすがにやり過ぎです。これ以上続けるなら大学のハラスメント窓口に報告させてもらいますね。」
そう言って智花は腰を上げた。
「ふーん、ずいぶん強気なのね。でもいいの?私にそんな態度をとって。」
「当然だと思いますけど。昭和の時代ならいざ知らず、今は令和です。先輩なら何でも許されると思ったら大間違いですよ。」
「これを見てもそう言える?」
美桜はスマホの画面を智花に見せる。
画面には、プールの更衣室と思われる場所で撮影された映像が映っていた。
中心には競泳用の水着を脱ぎ、タオルで髪を拭いている女性がいた。人目も気にせず、全身が余すところなく映っている。智花はすぐにこの女性が誰なのか理解した。自身の姿なのだから当然である。
「何でこんなものを?消してください!」
「嫌だね。あ、言っとくけどこの映像は海外のクラウドサービスにバックアップを保存してあるから、スマホだけどうにかしたって無駄だから。」
智花は青ざめている。同性しかいない更衣室で自身の裸を撮影されるなど夢にも思っていなかった。しかしこれは紛れもない事実であり、美桜に対し絶対的な弱みを握られてしまったのだと悟った。
「あなたが私の指示を無視して帰るのは自由だし、大学に告げ口するのも自由。でも、私がスマホの操作をつい“うっかりと”間違えればこの映像は世界中に流れることになるよ。あなたの可愛いお尻も、きれいなおっぱいもみんなが知ることになるよね。そうなったらあなたは街中を裸で歩いているのと一緒。ここで私一人に裸を見せるのと、どっちがいいかなあ。」
智花は絶望した。もう二度と美桜に逆らうことはできない。どれだけ理不尽だと思っても、ここは言うことをきくよりない。
「分かりました。」
そういうと覚悟を決め、着ていたTシャツに手をかける。
バイト用の服装なので、着ている枚数は少ない。Tシャツとデニムのパンツを脱ぐと、あとはキャミソールとブラ、ショーツのみだ。
同性の前とはいえ、さすがにここで一度手が止まる。
「何で止まってるの?裸になれって言ったよね。」
すごみのきいた声で言われてしまっては、智花も観念するしかない。
最後の一枚を脱ぐと、智花は美桜に正対した。胸と股間はそれぞれ手で隠している。
はい、よくできました。でも先輩の前ではもっとシャキッとしないとね。手は横、体を隠すのはやめなさい。」
智花は渋々手をどけた。ついに全身が美桜の前に晒されることとなる。
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