好きですカルトワイン

 本でも映画でも、もちろん宝塚でも、いつもは見終わった後にすぐその感想とか思ったこととかを整理したくなってすぐにパソコンに向かうのですが、色んな感情が一気に湧いてきて、でもそれが心地よくて、しばらくは言語化しないでこの感覚をこのまま味わっていたい…って何かに対して思ったのはカルトワインが初めてです。
面白かった!幸せだった…!豪華!演出がすごい!などなど言いたいことはたくさんあってどれも当てはまってはいるけど、でもそう簡単に言い表せるものでもない感じがして。

でもぽつりぽつりと言いたいことは出てきて、それをtwitterでちょっとずつ吐いてはいるけど長すぎて書けないこともあるので、それをここで。

 カルトワインって見終わってすぐはあまりに内容がすんなり入ってくるから、本当に直後はラストの展開のインパクトもあって脚本の面白さが一番に出てくるんですけど、その引っかかるもののなさがどれだけすごいことなのかを後からじわじわ実感してさらに好きになっていく作品だなって思います。

 例えば、作品紹介にある「羽振りの良さ、膨大な知識、確かな舌、上品な物腰と人懐っこい性格で信用を得たカミロの…」の部分。中でも、上品な物腰と人懐っこい性格。これが、見てて分かるんですよ。舞台を見てこの表現がそのまま浮かぶほどのエスパーではないけど、でも2幕で急にオークション会場に現れたカミロがすんなりと人々に信頼されていくことに、見ていて違和感がなくて。少し派手なスーツをすらりと着こなして、誰もがびっくりするほどの大金を出したのに実際話してみると拍子抜けなくらいに人当たりが良くて、奢るどころか恥じらいを見せるようなところもあって…。それを全部舞台の上で「見せて」くれる。それをやってのけている。人好きのする性格が、カミロだけを見ていれば理解できるところが何気にすごいなって思います。

 物語の中の設定を、観客が設定として飲み込んで成立させる物語って結構多いと思うんです。周りがうっとりとした視線を向けるからその人はすごくモテているんだと分かる、主人公から敵意を向けられているから悪い人なのだと分かる、みたいな。そういう表現の仕方も面白いし舞台ならではだなぁと思うので好きなのですが、カルトワインはそういう外堀から埋めていく意味付けが全然ない。全部その人単体で表しちゃう。
カミロの人好きのするキャラクター、フリオのすべてが優しさからくるあの性格、チャポのただものではない感じ、ディエゴの懐の広さ…。それを頭で理解して飲み込まないでも当たり前に受け入れて観れるお芝居ってこんなに面白いのか!って新鮮でした。贅沢なことだなーって思います。

ほんとに好きです、カルトワイン。
重厚な名作!というようなタイプではないけど、軽快で見た後の気分が心地よくて、脚本と演出とお芝居との奇跡のようなかみ合わせの上に成り立っている、あらゆる意味での絶妙さが好きです。

 カルトワインの好きなところの10分の1でもないです多分。でも言葉で表しきれるものでもないので、この辺で。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?