イティハーサにおける誤植問題

当時リアルタイムで読んでいた方(いるかな?)ならご存じかもしれませんが、イティハーサは誤植がソードマスターヤマト並みに多い作品でした。

最初期で確認できたのはこちらです。

正しくは「もう十一年ほど」です。

1989年12月号からは、読者参加型コンテンツ「イティ倶楽部」が始まっており、1990年1月号の第2回では水樹先生が自ら誤植をネタにするエピソードが描かれているのですが…ここにも誤植が発生!

赤丸部分に注目。「在住」が「在中」になってます。


青比古が明らかにやる気ない。

その後も誤植が発生しました。
特に1990年2月号は誤植の嵐です。
1990年4月号(当時は隔月連載中)に載った訂正内容は以下の通り。

① 誤:あいつらの声だ  正:あいつの声だ
② 誤:痛っ!!(いたっ) 正:痛っ!!(つっ)
③ 誤:幾度(いくたび)でも 正:幾度(でも)
④ 誤:これを預けなかった 正:己れ(おのれ)を預けなかった
⑤ 誤:今日(こんにち)より 正:今日(きょう)より
⑥ 誤:もつのか  正:示すのか
⑦ 誤:渡米した人々で 正:渡来した人々で

アメリカ?

ルビ間違いが大半なのですが、⑤「今日」のルビは文庫版になっても「こんにち」のままでした(実際には間違いではなかったのかもしれない)。
また、④「これを預けなかった→己を預けなかった」のように、豪華本初版では修正されなかったものの、第2刷以降は直っていたケースもあります。

左は初版、右が第2刷。ぶ~け本誌には初版修正漏れのお詫びが載りました。


ただし豪華本の後に出たコミックス初版では直ってません。
kindle版も同様でした(初版を基に印刷orスキャンしたのだと思われます)。
第2刷以降のコミックスでは直ってるかもしれないです。


これらについては前回に引き続き、イティ倶楽部で水樹先生がネタにしていました。

貴重な那智のギャグシーン

この時期(1990年頃)は写植ミスが多発していたようです。当時の担当さんがミスったのだと思いますがいくら何でも多すぎて呪われているのではないかと思うほどです。

豪華本では「すべては偽善だと!!」に直されてます。


桂さんが「柱(はしら)」さんになってしまっている。


下はぶ~け本誌、上は豪華本。人数が…!

イティハーサは打ち切りになったものの、単行本発売をもって完結し、その後は早川書房から文庫版が発売され、重版が繰り返されるという喜ばしい結果となりました。

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しかし誤植の呪いはここで終わりませんでした。



文庫版第7巻において、ストーリーの根幹を揺るがすような、最大級の誤植が発生してしまったのです。

おわかりいただけるだろうか…。

一文字違うだけでとんでもない違いが出てしまいます。
最初に気づいたのはハヤカワ文庫版でなく、LINE漫画版を読んでいた時でしたが、気になって他の電子書籍版も確認した結果、「まんが王国」、「コミックシーモア」「スキマ」でも同様の誤植を発見。

※この記事執筆時にはこの文章の下に丁度1年前(2022.9.19)のツイートを埋め込んでいたのですが、記事アップ直後に操作を誤って元のツイートを消してしまいました…ご了承ください。


たまたま手元に文庫版7巻の初版と第4刷があったので確認したところ、初版に上記の誤植を発見。第4刷は直っていました。
文庫版初版をベースにした電子書籍で誤植が発生しているらしいと気づき、上記の電子書籍を配信しているB社に問い合わせのメールを送ったところ、

「これまで指摘がなく気づきませんでした、申し訳ございません。これから修正します(意訳)」

という返事を貰えました。

その後、お礼の返信のついでに「作品紹介ページで登場人物の名前(※)が間違っているので、できればそれも修正いただきたい」と依頼したところ了承の返事をいただきました。

(※)トオコとすべき部分がヨオコになっていたり、トオコの漢字が違っていたため修正依頼。正しい漢字は機種依存文字のため、カタカナ表記で対応となりました。

2022年秋から、B社運営の各サイト及びB社配信のデータにおいて徐々に修正が開始され、2023年9月現在、全て修正が完了していると思われます。

<時系列>
ハヤカワ文庫版の第7巻初版で章タイトルに誤植発生(某サイトのレビューで指摘あり)。第2刷以降は修正済み。

文庫版ベースの電子書籍は初版のデータを使用したため、誤植が入ったまま各サイトで配信されていた。

今回、私がLINE漫画を読んだ時にこの件に気づき、配信会社へ問い合わせ。

…という流れです。

ちょっとびっくりしたのは、電子書籍配信からかなりの時間が経過していたにもかかわらず「これまで誤植の指摘がなかった」という点です。気づいていたファンはいたのかもしれませんが、紙の書籍と違って電子書籍だとどこに問い合わせていいかわからず、そのままにした人が多かったのかな、と推測します。
ページを飛ばされやすい扉絵でのミスだったので気づかない人も多かったのでしょう。かくいう私も文庫版初版は発売当時(2000年)に買っていたくせに、このアカウントを始めた2022年にこの誤植にようやく気づきましたので…。

現在、一番閲覧される媒体であろう電子書籍の誤植が直ったのでよかったです。丁重に対応していただきましたB社の担当者・K様に御礼申し上げます。

<余談1>
水樹先生のホームページでも、今回の記事で紹介した誤植の一部を水樹先生ご自身がネタにされていますので興味があればご覧ください。
トップ→ギャラリー→【おまけ】→その他の作品 の順に行くと、
笑える誤植1~3が閲覧できます。

<余談2>
コミックス15巻発売時は写植ならぬ印刷ミスが発生してました。ひどい。

現存していればレアもの扱いかもしれない

<余談3>
冒頭に書いた『ソードマスターヤマト』ですが、「ひどい誤植をされる&その後打ち切られる」という内容がちょっとだけイティと共通しているように思いました(個人の感想です)。
イティの場合はリアルでやられたので全く笑えないのですが。
ちなみにぶ~けの後継雑誌であるCookie』に連載されていた東村アキコ先生の『きせかえユカちゃん』はwikipediaによると編集部が先生に無断で「次回最終回」と記載してしまい、それが元で休載に至ったそうですが、ソードマスターヤマトでも似た展開があります。

youtubeに動画がありましたので参考にご覧ください。


辛い状況の中、全身全霊で執筆し、イティハーサを完結してくださった水樹先生には感謝と尊敬の念が絶えません。これからも何かネタがあれば記事を書いていきたいと思います。

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