「宗教活動」と「離婚」

判例分解ノック 4本目(名古屋地裁 昭和62年3月27日 判決)

概要   (名古屋地裁 昭和62年3月27日 判決) 判例タイムズNo637
 被告(妻)は、キリスト教に興味を持ち伝道会や祈祷会に参加。原告(夫)は、被告の宗教活動に不満を持ち被告に教会へ行くことを禁じたが、被告は、原告に告げずに、長女とともに洗礼を受けた。原告は、被告の宗教活動が、家業に影響を与える等の理由で、被告の宗教活動を禁じ、結局、被告は原告の家を出て4年間別居状態となった。原告は、離婚を請求。

争点
原告が被告の信仰を認めず、別居が四年余り継続している場合に、「婚姻を継続した重大な事由」があるとは言えるかどうか 

判旨
「原、被告間の別居生活は四年余りに達しているが、その別居の原因は原告が被告の信仰を認めず、信仰か家庭かの二者択一を迫り、被告がどちらも棄てられないとの態度とったこと、原告が被告を追い出して、戻ることを拒否していることに基くものであること、同居中の被告の宗教活動といえるのは、月一ないし三回程度の集会出席すること、それも仕事に差障りの少ない夜の集会に限られていたこと、ときどき部屋にこもって聖書を読んだり、就寝前に小さな声でお祈りをする(この点は弁論の全趣旨より認められる)という程度であり、教会の集会時間等からみて、仕事に幾分差支えた面があった事は推認できるけれども、被告の行為は家事や仕事を顧みなかったと言うような常軌を逸したものとは認められないこと、被告は別居後も原告との同居を強く望み、子らとも交流し、原告に対し手紙を出したり、プレゼントをしたり家に帰れることひたすら願っていることが認められ、原告が被告の信仰を許容さえすれば、夫婦共同生活の回復を可能であると認めること等考え合わせると、原、被告間には民法七百七十条第一項五号の『婚姻を継続し難い重大な事由』があるとは認めることはできない。」

条文 民法(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

フレーズ
「被告の行為は家事や仕事を顧みなかったと言うような常軌を逸したものとは認められないこと」
「原告が被告の信仰を許容さえすれば、夫婦共同生活の回復を可能であると認めること等考え合わせると、原、被告間には民法七百七十条第一項五号の『婚姻を継続し難い重大な事由』があるとは認めることはできない。」


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