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先代犬“ポチ”のお散歩

 “ポチ”の1日は朝5時のお散歩から始まる。おトイレ兼お散歩兼パトロール兼お友達(どちらかというと犬友の飼い主さん)へのご挨拶だ。時間にして約30分。それ以上の場合もあり。

その後、朝食をとったり、同じく朝食をとる母上の周りでトーストの破片をねだったり、水分補給したり、各々仕事へ出かける家族を見送ったり、お気に入りのクッションのふかふか具合を確かめたり、テレビを試聴したり、外で他のわんこが喋るのを盗み聞きしたり、おやつを食したり、エネルギーを温存すべくお昼寝をしたり、帰宅する家族を順次お出迎えしたり、おやつを食したり、夕食をとったり、同じく夕食をとる家族の周りで白米をねだったり……
それに加えて、お昼頃、夕方、就寝前のお散歩が追加されるので多忙極まりない。

そんな多忙な“ポチ”は、お散歩兼が好きだったように思う。
基本的にお散歩コースの選択は“本日のオススメコース~季節の風を添えて~”となる。“ポチ”の気が向く方向へずんずん歩くのみだ。ただ、放っておくとどこまでも遠くへテリトリーを広げようとする。
マーキングのためのおしっこは、お散歩が進むにつれてタンク残量が減っていき、エンプティマークが点灯し最終的には頑張って頑張って絞り出して「ぴちょん」と1滴放たれる程度になる。
「最初のほうで、勢いよく出すからやん。
もちっと加減して出さんからすぐに
エンプティマーク点灯すんねんで。」
と“ポチ”に話しかけつつお散歩が終わる。

私は出勤前に“ポチ”を外へ連れ出す担当だったので、
どこまでも歩こうとする“ポチ”に
「あの……そろそろ……お時間が迫っておりまして……不本意でありますが……Uターンをして帰路に……」
ここは丁重にお願いする。懇願する。
しかし、そんな事情は“ポチ”にはもちろん関係ない。どこまで歩こうとする。
遠ざかる家。迫る出勤時間。焦る私。
そして、ご機嫌に歩く“ポチ”。
ダメだ……最終奥義を繰り出すしかない……!!
「ごめん!!!!もうアカンわ!!!!!」
と言いながら“ポチ”を小脇に抱える。そう強制終了だ。
不満顔の“ポチ”を小脇に抱え、帰路を急ぐ。

そうして最終奥義を何度繰り出しただろう……

今現在、一緒に暮らしているプチは一歩外へ出ると、超絶ビビり陰キャチワワへと変貌するのでお散歩は時間にして10分にも満たない。
特に他のわんこや獲物(鍬や鎌や杖)を持ったお年寄りに遭遇すると、即座にUターンを決める。
プチがUターンを華麗に決めるたび、
“ポチ”とのお散歩をもっと楽しめば良かったなぁ……
と後悔が胸を刺すのである。


(私の家族に約15年前に加入しそこから9年ほど一緒に暮らせた“ポチ”との生活を、型も定まらない稚拙な文で書き散らしております。最近になってようやく、“読んでくださっている方がいる………!貴重な時間を割いて……!”と気付き、驚きと感謝で一杯です。少しずつ色々な出来事を思い出して綴っていければと思いますので、お時間に余裕がある時にでも覗いていただければ嬉しく思います。)

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