ちょこっとプチのこと
たった今、
「ふ~っ。ふんっ。」とため息と鼻息らしきものが聞こえた。現メンバーのプチである。
画像は「あなたが深淵をのぞく時、深淵もまたこちらがわをのぞいているだ……」のプチである。
“ポチ”が居なくなってから1年と我慢できずに新メンバーとしてスカウトされたプチ。
私が最近、“ポチ”のことばかり書くので拗ねて……ないと思う。なぜなら、私目の前にはプチが大好きな「犬用おからせんべい」の入れ物があるからだ。私が少し体を動かす度におせんべいが出てくるかどうかを確かめている。なんなら私の視界に入り、右へ左へゆらゆら顔を揺らして存在をアピールする。
おからせんべい(犬用)、干しいも(犬用)、りんご、ブロッコリー、キャベツ、おっとっと(犬用)、トーストの破片、米粒、豆腐、納豆、うどん、素麺、チーズ(犬用)
もなかの皮、シュークリームの皮、肉まんの皮……等々をこよなく愛するプチとの出会った時のことも
すこーーし、残してみようと思う。
“ポチ”が居なくなってから……
所謂……ペットロスというものを経験した。仕事への往復の車ではだらだら鼻水と涙を垂らしまくっていた。
周囲の証言によると、私が“ポチ”が居なくなったことを話し始めるのに半年を要したらしい。全員野球で守ってきた“ポチ”を失くした家族は、飛んでくるはずもないボールを待つように、うつろに日々を暮らしていた。
ある日、母上がとうとう口火を切った。
「ぽっちゃん(母上は“ポチ”をこう呼んでいた)にそっくりの子がペットショップにおって……ずっとおんねん……」
私の返事は
「そんなわけあるかい。“ポチ”ほどの漢はそう簡単にはおらん」だった。
「そうやんな……」母上が答えた。
それから数週間たったある日、父&弟が私言った。
「見に行くだけでも、一緒に見に行ったってくれ。」
私は“ポチ”意外の犬なんて考えられなかったし、罪悪感や後悔や不甲斐なさや申し訳なさや……色々な感情を抱いていた。分かりやすく言うと家族の中で私一人だけが新メンバーを迎えることに抵抗していたのだ。
家族は何度も
「一回、見に行ったって」と繰り返す。
あまりにもしつこいので、
「まぁ……見に行くだけなら……」と渋々、承諾した。
もしかしたら、新しい家族決まってるかもしれへんし、それはそれでええこっちゃ!!と“ポチ”をフサフサに仕上げてくれていたトリミングサロンが併設されているペットショップへ向かった。
さて……“ポチ”とそっくりてどんだけ似てるんやろ……
黒くて、茶色の眉毛がキリーっとしてて、ヤン毛ボーボーで、手足が茶色で男前な……
………………いない。そんなチワワさんはこのペットショップにはいない。どゆこと????
とキョロキョロしていると、母上が店員さんと親しげに話している。
「あの子を……」母上が言うと、
「あの子ですね(ニヤリ)」と店員さんが応える。
そうして私に手渡された「あの子」は………
全体的に茶色で、眉毛はなし、手足には白靴下、脳天に白い三角形のマークを刻んだ甘々なお顔をした小さなチワワだった。
抱き上げるとこちらをチワワの最大の武器である潤んだ大きな瞳でまっすぐに見つめてくる。
…う……………かわ…い…………い…………………
まだお散歩に行ったことがない柔らかな肉球が腕に伝わる。
……うん……かわい………い…………
「………………一緒に帰るか?」
思わず口をついて出てしまった。視界の端で母上と店員さんが目を合わせて微笑んでいる。
「あの子」が長い時間を過ごしたであろうガラスケースに目をやると、
「ご家族相談中」のポップ……
「え?ご家族、決まりかけてるやん!え??」と母上に問おうとすると……
「はい、ではお預け頂いた金額との差額を……」と店員さんが母上に説明していた。
ん??お預け頂いた金額……??
そう、相談中の家族とは何を隠そうウチの家族であった。
事の詳細はというと……
家族の中に一人だけ反対勢力がいる。そいつをなんとか籠絡せねばならない。しかし、そいつは頑なに姿勢を貫こうとする……一番手っ取り早いのは「あの子」を抱っこさせることだ!!!!
と、私の預かり知らないところで話がまとまっていたらしい。そして唯一の反対勢力を自身の可愛さを以て瞬殺したのが「あの子」=現メンバープチである………。
ちなみに、プチの命名権は私に託された。“ポチ2世”が良かったのだが、あまりにもかけ離れた見た目と、今でもお仏壇に鎮座している“ポチ”が落ち着かないだろということで「あの子」はプチとなった。
現メンバープチもなかなか濃ゆいエピソードを毎日量産しているが……それはまたの機会に……。
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