雪国の着物生活は、洗える着物もスノーブーツも何でもあり!

どうもこんにちは。春分の日に吹雪ブシャー!な土地に棲息する慈岳ですよん。いやーここは本当に関西なのでしょうか。ちょっとしたブリザードでしたねハイ。

私の生息地は11月に初雪、12月~2月は雪、3月もまぁまぁ雪で、4月に降る年もある。1年のうち5ヶ月は冬みたいなもの。以下、豪雪地帯までは行かないけど一応雪国の、合理的なのかテキトーなのか分からない着物事情をどうぞ。


●バカにできない洗える着物

黒紋付は私の土地のしきたりにおいて慶弔両方で着る機会が多く、正絹と化繊、袷と絽の、つごう4枚持っています。こちらも当地の慣習で10~5月が袷、6~9月が夏物となり、単は作っておりません。

礼装となるとやはり正絹のほうがしなやかで品良く見えますが、ベタ雪が積もっている日は注意が必要です。通行人や車道のクルマが雪を跳ね上げることがあるため、洗える着物が大活躍。

長襦袢を正絹にしておけば、静電気があまり起きませんので、覚えておくと良いでしょう。乾燥した氷点下の日だと、化繊どうしでは歩く発電機ですね。トイレのたびにばちばちと感電して困るのと、あと化繊は寒い。脱ぐときも着物と長襦袢が磁石みたいにひっつきますw

●雪国では着物にブーツ

当地で売られている冬用草履はほぼ雪対応です。しかし雪が深いときは、草履だと足そのものが埋まります。そこで黒のスノーブーツを履くことがあるのですが、これがまぁ捗ること。裾を短めに着てお出かけです。

特にお年寄りは危ないので礼装でもブーツの方がおられ、「着物にブーツは若い娘の間で流行ってるらしいよ~」「おばあちゃん流行の最先端だねぇ」などと、皆からワイワイ言われます。もちろん草履の人が多数派ですが、雪道は安全第一。誰も意地悪なんて言いません。

●防寒には肘サポーターとタイツ

雪国の冬は氷点下が当たり前。行道(ぎょうどう)といって宗教行事に出仕するときはお練りに加わったり、お練りの両脇でお歌を唱えたりします。屋外で帯付きのまま長時間立ちますから、腕から脚から凍えまくり。鳴り物を持つ指先は感覚がなくなります。

なので、私らはみんな中に『仕込み』をしますね。目立たない色の洋式肌着やタイツを着用したり、肘サポーターを着けて小型のカイロを貼っておいたり。これらの効果は抜群で、サポーターがある部分は普通に白いのに、それが途切れた手首から先はくっきり真っ赤という、ちょっと冗談じゃない現象が起こります。

●帯はみんなでチェック

朝早い行事の日は、まだ温まっていない部屋で着物を着なければなりません。平地の外気温より寒いですが、ストーブを点けて温まる前に着終えてしまうのでそのままお着替え。手がかじかみます。そこで、その場では適当に帯を締めてしまい、出仕先の控室で誰かに背中チェックしてもらうのです。

メンバーにはまだ着慣れない人や腕の上がりにくいおばあちゃんもおり、お太鼓がずれていたりタレやテがおかしかったりなんてのは日常茶飯事。でも、誰かに見てもらえばラクラク。元々背中結びの帯は人に後ろを頼むものなので(丸帯とか)、人に直してもらうことは全然恥ずかしくないのです。

●草履での雪道の歩き方

和装初心者は、歩き方で分かります。踵を上げて草履をパコパコさせているので、普段和装をしない人や最近和装デビューした人は、例えば百貨店の茶道具屋なり老舗呉服店なりで、バレてしまいます。

これだけなら別に恥ずかしくも何ともないのですが、雪国の凍結路は別。洋靴歩きのままで草履をパコパコやってると雪道対応の草履でもズルッと滑る。恥など単なる精神ダメージで済む。しかし転倒すれば物理的に危険です。着物も汚れて破れて、金銭的ダメージも不可避。

凍結路は、ある意味草履で歩くよい訓練となります。草履をしっかり足裏に付け雨垂れが落ちるようにポトンポトンと歩きましょう。浴衣指南ブログでよくある『小股で"ちょこちょこ"』とは違いますよ。

かわいらしくちょこちょこやってたらガチで疲れますし遅刻します。歩幅を小さくする点は同じですが、草履の裏全体で大地をしっかり踏み、足首をやわらかく、1歩1歩を大切にして、自分の足のサイズを1歩として丁寧に歩くのです。

●吹雪の日はどうしてる?

庶民は化繊の雨コートで充分です。移動はマイカーか、またはタクシー呼んでドアtoドア。私らは行道のときはオール化繊で静電気ばちばちですが、何万円も掛かる悉皆に出すことを考えれば発電ババアになるなどちょろいもの。人絹製造技術の進んだ現代に生まれて良かったと思います。

雪はどこにでも入り込みますので、傘など大した意味もなく自分に積雪します。でもね、雨なんかより全然マシですよ。払えば落ちますので。あと頭や肩に積雪したまま行道する私らに、お客さん方は優しい言葉を掛けて下さいます。これはこれでインスタジェニックか?(撮るなや)。

洗える着物、可愛がってあげてください。雨が降ろうが槍が降ろうが和装で屋外にいなきゃならない私らにとって、洗える着物は軍隊でいう戦闘服のようなもの。使えるもの、便利なものはどんどん使いましょう。需要があるから供給があるのですよ。

ではでは。

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