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ややこしや、祇園とJISと時々、弊社。~漢字検定編~

祇園といえば、一般的にイメージされるのが京都の繁華街の祇園だと思います。地名の由来は八坂神社(通称・祇園社)界隈という意味からです。同様に八坂神社(祇園社)の祭礼だから祇園祭となります。

さて、今回のテーマは地名の文字問題でもややこしさの三本指に入る祇園の「祇」についてです。

字って書かなくなったよね

「神社」は本来「示申 示土」でしたが、今はすっかり「ネ」で定着してしまいました。本来「示」であるものは神事に関わるものがその傾向にあります(祈・祝・祖など)。
この「祇」の字、一昔前の活字では「ネ氏」で表示されていたことを覚えていらっしゃる方もいるでのはないでしょうか。ところが今このブログでも表示されるのはご覧の通り「祇」ですね。

元々JISコードの漢字の割当には評判の悪い点が多いうえに、2004年にJISコード改変が行われ、界隈では大変微妙な問題がありました。今でこそ我々は文字伝達の殆どを電子機器に頼っていますが、本来手書きの時代が圧倒的に長く、たとえ元の正字とは違っていても異体字(ときには誤字)が次々に現れ、それが定着していってしまった歴史があります。
固有名詞である地名・人名はその最たるもので、

本来の正字とはちょっと違っていても、名乗られてしまったら認めざるを得ないのです。

京都八坂神社界隈の「祇園」は「祇」の字が正しいのですが、実は「ネ氏」で名乗っている地域も結構存在します。前述したとおり、八坂神社を総本山として祇園信仰というものが広まった関係上、「祗」もしくは「祇」の字を地名に使う地域は全国に広まり、そこで異体字で名乗る例が発生するのは当然の成り行きです。

この結果、2004年まで「祇」の字を表示するために外字を使い、「ネ氏」をJIS文字として使用していた場合、設定を逆にしなければならなくなる訳です。当時てんてこ舞いになった方もいらっしゃったはずです。

さらにこの紛らわしい「祗」という字、音は「シ」と読みますが、JISの第二水準に存在します。以前の「祇」のフォントが「ネ氏」であった関係上、字形が似ている「祗」を使用してしまう場面が過去にあったであろうことは容易に想像がつきます。

ちなみに今ご利用の端末で「ぎおん」と入力してみてください。変換候補に「祇園」「祗園」の両方が出ますよね。

何というトラップ!!!

と怒ってはいけません。実は「祗園」が正しい地域もあります。どうしてそうなったかは各地域で様々ですが、固有名詞に関しては

誤用も定着してしまえば正字になってしまうのです。うぅ…

では具体的に「どの字がどのくらい使われているのか」がこちら

現代日本の異体字ー漢字環境学序説ー(2003年・三省堂)第2章「地名の異体字」(笹原宏之)

漢字検定かな?
4種類は組み合わせ上想定していましたが、まさかの「袛」まであって5種類。「祇」と「祗」は字義が違うため異体字の種類としては正確には合算できませんが、合わせてしまうと、「崎」の7種類に次いで「竈」の5種類と並びます。地名文字問題の「ややこしさの三本指」と前述した理由がお分かりいただけましたでしょうか。
ところで、今回はあえてユニコードを多用しました。我々は長い間JISコードに縛られていましたが、そろそろそういう時代ではなくなってきているのかもしれません。

もうひとつところで、ですが、笹原先生の「現代日本の異体字」の調査ではこちらのデータベースが使用されました。
https://www.kajo.co.jp/f/digital_contents/software01.html

弊社でも利用しているものですが、電子化方法が明示されており、殆どの自治体の住民課で使われている実績、そして比較的安価!しかも「外字あり版」というオプションがあり、異体字調査にはうってつけの内容なのです!(すいません、宣伝という訳ではありませんが、まあそういう気持ちもちょっとあります)

興味を持っていただけたら、次のブログで「祗」がつく町「川崎市中原区木月祗園町」の混乱ぶりをお届けします。

これ弊社😉