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介護業界の構図と働く人の内情

 介護ビジネスの大手といえば、ニチイ学館、損保ケア、ベネッセなどが思い浮かびますが、これらの企業の存在感は現場レベルではそれほど大きくありません。確かに地域に1つは関連施設があるイメージですが、それらが地域の中で際立っているわけではなく、あくまで大勢のうちの一つといった印象です。また介護大手といっても、介護事業だけをやっているところはあまりないようです。

 逆に存在感があるのは、やはり介護保険の保険者である市区町村や県、国(特に厚生労働省)などの公的機関です。またそれぞれの地域に根差した社会福祉法人が、介護分野の行政窓口を兼ねた地域包括支援センターを運営しているのも無視出来ない要素です。そういった意味で介護業界は公的機関を中心に廻っているといえます。これは一般のビジネスにおいて業界大手の動向を無視出来ないことと好対照と言えるかもしれません。ただ影響力のある公的機関の人達がすごく威張っているかと言えば、意外とそういう訳ではないです。

 実際、介護業界には中小企業の占める割合が大きいですが、こんな環境ですので、現場で働く職員に大手企業に入れれば安泰とか、キャリアアップして大手企業で働きたいとかいう意識はほとんどないと思います。別に格好をつけてる訳でも意識が低いわけでもなく、介護現場の人に「大手の事業所で働いてみたいか?」と質問したら、「大手で働いたところで何か変わるの?」という素朴な返事が返ってくると思います。介護業界大手の存在感はその程度のもので、私を含めてほとんどの人がその内情を知りません。(同一のサービスならば大手だろうと中小だろうと公定価格が介護報酬で決まっている影響も大きいかもしれません。)

 また、介護福祉サービスと隣接した事業領域に、障がい者福祉サービスがありますが、やっていることは近いものがあるにも関わらず、人材の移動などの交流はほとんどありません。(まったくないわけではありませんが、障がい者福祉から介護福祉に移るよりは、一般企業から介護福祉に転職する人の方が多いと思います。)実は私自身は障がい者福祉分野から介護福祉分野に移動してきたのですが、理由は分かりませんが、あくまで介護の人は介護、障がいの人は障がいでずっと働いている印象があります。また実際にデータを調べた訳ではありませんが、障がい福祉の方に福祉系大学の卒業者などを中心に若い人が多い印象です。それに対して介護福祉で働く人は以前は一般企業に勤めていたり、あるいは専業主婦だったりした人が多い気がします、あくまで私の経験からの印象ですが。

 働いている人の中には外国籍の方も多いですし、この業界で働く人達は多様性という点ではなかなかのものがあるのですが、それをイマイチ活かしきれていないのが現状です。やはり「感情労働」といいますか、基本が対人サービス業で皆気を遣いながら日々働いているので、同僚の中の気が利かない(ように見える)人に強く当たりがちな傾向があり、それがせっかくの多様性を抑圧しているのかもしれません。かくいう私自身が、この業界で働くようになってからコンビニやお店の店員の接客態度に対して「さすがにそういう態度はないでしょ。仕事なんだから!(こんなんならいっそのこと全部セルフレジにしてくれ!)」と内心鼻につくことが増えたので、「職業病」だと思って気をつけるようにしています。


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