「食堂み」の女たち22
この日は響子の一人負けで、もうやめた!と千八百円を財布から支払った。安い賭けだ。眠そうに目を擦っている俊一を見た美奈が「今日はうちの部屋で寝かせるわ」響子に目配せをして二階へ連れて行った。光恵は響子に濃いめのお茶を入れ、自分も一口、ゴクンと飲んだ。
「あんた気づいてんのやろ?」カウンターにいる響子の横に座り、両手で湯飲みをギュッと握りしめた。「なんのこと?」
二人の間に時間が流れる。
ゴーン
除夜の鐘が鳴り始めた。平成十年が終わろうとしている。
「もうすぐ年が明けるな」響子が呟くと「あの指名手配のやつ…」「ああ…」「分かってたんか」「そういう光恵さんも分かってたんやろ。それもずっと前から。うちは光恵さんの考えてることは分かるねん」「何がや、言うてみ。考えてることって」
続く
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