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セガのドリームキャストとビジュアルメモリー(VM):次世代ゲーム体験を切り開いたデバイス

はじめに

1999年、セガが発売したドリームキャストは、当時のゲーム業界に数々の革新をもたらしました。

その中でも、特に注目されたのが周辺機器の**ビジュアルメモリー(VM: Visual Memory)です。
VMは、従来のメモリーカードとは一線を画する多機能性を持ち、ゲームプレイに新たな体験を提供しました。

1.ビジュアルメモリー技術的革新と影響

VMの最大の特徴は、単なるセーブデータ保存にとどまらず、多様な機能を備えていたことです。

VMは、ゲーム機のコントローラーに挿入して使用するだけでなく、取り外して持ち歩けるポータブルゲームデバイスとしても利用でき、ユーザーに新たな可能性を提供しました。

① 大容量メモリーと複数データ管理

VMの記憶容量は128KBで、当時としては大きな容量を誇っていました。
これにより、1つのVMで複数のゲームのセーブデータを保存できる利便性を提供し、プレイヤーがゲームデータを効率的に管理できるようになりました。

さらに、ドリームキャストは複数のVMを同時に使用できたため、プレイヤーはゲームごとにデータを保存するメモリーカードを使い分けることができました。

② リアルタイム情報表示機能

VMには、1.5インチのモノクロ液晶画面が搭載されており、これを利用してゲーム内の追加情報をリアルタイムで表示することができました。

この機能により、プレイヤーはテレビ画面を占有することなく、戦術情報やアイテムのステータスなどの重要な情報を確認することが可能でした。

このリアルタイム情報表示は、特にRPGやアクションゲームで戦略的な要素を強化し、ゲーム体験をより深く、より臨場感のあるものにしました。

③ ポータブルゲーム機としての利用

VMUはコントローラーから取り外し、ポータブルゲーム機としても使用できました。

代表的な例として、『ソニックアドベンチャー』では、「チャオ」という育成キャラクターをVMにダウンロードし、外出先でも育成することが可能でした。

これにより、プレイヤーは家を離れてもゲームを楽しむことができ、ドリームキャスト本体に戻った際には育成したデータがゲーム内に反映されるという、ゲームプレイの連続性が確保されました。

④ 通信機能によるデータ共有

VMには通信が搭載されており、2台のVM間でデータのやり取りが可能でした。

この機能を利用して、友人とセーブデータを交換したり、育成したキャラクターを対戦させたりすることができました。
これにより、プレイヤー同士が簡単に協力したり競争したりする新たなプレイスタイルが生まれ、ゲーム体験の社会的な要素も強化されました。

2.ゲーム体験を変えたVMの実例

VMがどのようにゲームプレイを進化させたかを理解するために、いくつかの代表的なゲームを紹介します。
これらのゲームはVMの機能を最大限に活用し、プレイヤーに新たな体験を提供しました。

① 『ソニックアドベンチャー』チャオ育成システム

『ソニックアドベンチャー』は、ドリームキャストの代表作の一つであり、VMの機能を最大限に活用した最初のゲームです。
プレイヤーは「チャオ」と呼ばれるキャラクターをVMに転送し、外出先で育成することができました。
これは、当時としては革新的な体験であり、プレイヤーがゲーム本体から離れても、VMを使ってゲーム体験を継続することができました。

育成したチャオは、ドリームキャストに戻った際にゲーム内に反映され、その成長過程がプレイに直接影響するシステムは、ゲーム内外の連続性を強化し、プレイヤーに新しい楽しみを提供しました。

② 『バイオハザード コード:ベロニカ』
のリアルタイムステータス管理

このゲームでは、VMの画面を利用してプレイヤーにリアルタイムでキャラクターのステータスやアイテム情報を表示しました。この機能により、プレイヤーは画面を切り替えることなく、常に最新の情報を確認することができ、スムーズなゲーム進行が可能になりました。このような追加情報を提供する機能は、特にサバイバルホラーゲームにおいて、プレイヤーの戦略的な判断を助け、ゲームへの没入感を高めました。

③ 『NFL 2K』でのプレイブック確認

スポーツゲーム『NFL 2K』では、VMを利用してプレイ中にシークレットプレイを確認することができました。これは対戦相手に次のプレイ内容を知られることなく、戦略を立てることを可能にしました。この機能により、対戦ゲームにおける戦略性と緊張感がさらに高まりました。

3.VMが与えた長期的影響

VMは、セガのドリームキャスト専用の周辺機器として、その役割を果たしましたが、ゲーム業界全体にも大きな影響を与えました。

VMのコンセプトは、後のポータブルデバイスや周辺機器に影響を与え、現代のゲームデザインにもその足跡が残っています。

① ポータブルゲーム機への影響

VMのコンセプトは、後に登場したソニーのPSPやWii Uなどのポータブルデバイスや2画面操作に大きな影響を与えました。
据え置き型ゲーム機の一部を外に持ち出して遊ぶアイデアや、2画面操作が可能な点は現在も受け継がれている部分があります。

特に、データの持ち運びや外出先でのゲームプレイというアイデアは、モバイルゲームの基礎であり、現代のスマートフォンゲームの基盤にもなっています。

② データ連携の発展

VMが実現した異なるデバイス間でのデータ共有は、現在のクラウドセーブやクロスプレイの概念にも通じています。

プレイヤーが場所やデバイスにとらわれずにゲームを楽しむことができる現代のゲーム環境は、VMが提示した可能性の延長線上にあると言えるでしょう。

まとめ

セガのドリームキャストとビジュアルメモリー(VM)は、1999年という時代において、技術的な革新をもたらしました。

VMは単なるメモリーカードではなく、ゲームの進行をサポートする多機能デバイスとして、プレイヤーに新しい体験を提供しました。

リアルタイム情報の提供、ポータブルゲームデバイスとしての活用、そしてデータ共有機能など、VMは多くの要素で未来のゲームデザインに影響を与えました。

ドリームキャストの短命な運命にもかかわらず、VMの革新性はゲーム業界全体に残り、現代のゲーム環境にもその影響が続いています。

画像出典:https://www.techno-edge.net/article/2023/11/28/2344.html

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